【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
この夏は台風こそ少ないものの、猛暑日が続き、体温を超える気温になる日が多い。さらに新型コロナ感染の第7波の到来で、雇った学生アルバイトの体調や休みなどが心配だったが、8月に入っても全員がしっかりシフトを守って夏期講習会を支えてくれている。
この夏期講習会の売上は、参加人数45名×3万円で135万円。1年前と比較すると驚異的な売り上の伸びだが、なにせ個別指導のために必要になる講師の数も多く、全員が学生アルバイト講師とはいえ、人件費だけでおよそ72万円かかる計算だ。
ここから家賃の10万円、光熱費(電気代がどんどん上がってきている)が10万円、日本政策金融公庫への返済が38,000円、その他広告費など諸々を差し引くと、利益はおよそ30万円というところになる。まずは経営が安定して黒字化していることを素直に喜んだ。
講習会自体の運営もここまでは順調。どの講師も刷新した企業理念を意識して親身に取り組んでくれている。その軸がしっかりしているので、こちらの指摘した内容も素直に受け止めてくれるので、さらに全体のサービスの質は向上していた。
「生徒の未来のために!」、「明るい社会を築くために!」、「将来の日本を支える人材育成のために!」、講師それぞれが内発的動機で積極的に働いてくれている理想的な状態だ。この雰囲気をぜひ夏休み明けも継続していきたい。
ただ、8月に入って、生徒も含めてだが、教室全体にやや疲労感が漂うようになってきた。生徒たちは2日に1度の3時間の授業を受けつつ、多い生徒だと毎日朝から晩まで自習室を活用して勉強しているのだ。自習室は満席状態が続いており、質問受けなどの対応で講師陣もかなりの長時間勤務になっている。
学生アルバイト講師はみんな大学生と若いので、体力的にはかなり無理はきくとはいえ、報告や家庭との連絡、清掃や猛暑の中での自転車整理など業務は多岐に渡り、日増しに足どりが重くなっているのがわかった。表情にも疲れが感じられる。
ここは事前に顧問税理士の天海さんからアドバイスを受けていた、
「外的刺激によるモチベーションアップ」
を図る必要があるかもしれない。わかりやすい例で言うと、
「昇給やボーナス」
なにせ世界的なインフレの状況で、この日本でも利上げにこそ舵は切られていないものの、物価上昇は間違いなく起こっている。ガソリンや電気といったエネルギーから、パンなどの食品に至るまで幅広く値上げして、生活を直撃している。ボーナスまではいかずとも、時給を少しでも上げれば、学生アルバイト講師のモチベーションが高まるはずである。その勢いでこの夏を乗り切るという戦略だ。
問題は一律時給を上げるのではなく、やはり貢献しているメンバーから評価していきたいという点だ。以前から働いてくれているふたりの講師はもちろん優先的に時給アップしたい対象だが、
長い期間働いているだけで
時給が上がるという仕組みは、
業務の質の向上には繋がらないだろう。
そこで登場するのが「アンケート」である。生徒自身に講師を評価してもらうものだ。「授業のわかりやすさ」・「対応によってやる気がどのくらい上がったのか」などの項目がある。これは多くの学習塾で採用している仕組みで、会社からの講師の評価にも大きな影響を与えている。
アンケートによって顧客満足が
ダイレクトに確認できるのだから
重要度は高い。
アンケート結果から
ボーナスの額や昇給を決める
学習塾もあるぐらいである。
ただ気になるのは、はたしていきなり投入して大丈夫かという点だ。やはり天海さんに相談してから決めた方がいいだろうか?