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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか74 部下の評価と人事」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 強みと真摯さ 

 

 

夏期講習会には休みがない。学生アルバイト講師たちはシフトで日替わりに休みを取ってはいるが、塾長である私は日曜日も祭日も関係なく指導を続けている。なので、なかなか時間が確保できず、アドバイスを受けたくても顧問税理士の天海さんと話ができない状態だった。

 

お盆の時期を迎え、休みになる生徒も増えてきたことから、そのタイミングで天海さんの事務所に電話をしてみた。

 

 

「猛暑が続いておるが、はじめさんは元気に働いておるようじゃの」

 

いつも聞く天海さんの声に癒やされる。

 

「実は・・・・・・」

 

私は講師陣のモチベーションアップのために昇給制度を採用しようと考えていることと、そのための評価対象として塾生にアンケートをとるつもりであることを伝えた。天海は受話器の向こうでしばらく考えた末、

 

「生徒にアンケートをとること自体は大賛成じゃ。満足度だけではなく、不満な点も洗い出しができ、さらにサービスの品質アップに繋げられるからの。ただし、その結果を即昇給に反映させるのは難しいじゃろう。基準が曖昧じゃろうし、講師の中には生徒に良い評価をつけてもらうよう直接お願いするような者も出てくるかもしれぬ」

 

確かに以前勤めていた学習塾でも不正などで問題になったケースはあった。そんなトラブルが起きると逆に全体の士気を下げる結果になりかねない。

 

「まずは率直なフィードバックを得て、サービスをさらに充実させる目的でアンケートはとるべきじゃな。もちろんその結果を見て、評価に繋げていってもいいじゃろう。

 

人気のある講師は

 

時間数を増やして、

 

さらに顧客満足度を高めることができる。

 

意外に評判の良くない講師は、

 

しっかりと現実に向き合ってもらって、

 

今後の自分の課題点を

 

見つけてもらうこともできるじゃろう。

 

特に他の学習塾で経年の長い講師は、自分のやり方に固執して、自己満足のサービスになってしまっているケースもよくあることじゃ」

 

 

「私も講師自身の報告で生徒との関係性など確認しているだけになっている部分もありますから、アンケートによって新しい気づきもいろいろ生れてきそうですね。人気のある講師はさらに活躍できる場面を増やすだけでもモチベーションは高められるようにも思えてきました」

 

「マネジメントで高名なピーター・ドラッカー氏は、部下の評価と人事についてこう述べている。

 

部下の評価と人事は、

 

彼らにできること、

 

すなわち彼らの強みを中心に行う必要がある。

 

弱みの中で重視すべきことはひとつしかない。

 

真摯さの欠如である。

 

これだけは見逃してはいけない

 

とな。生徒の評判の良さは大いに評価に値する。高い評価を受けて、さらにそれに応じて指導時間が増えれば、責任も収入も増え、モチベーションも高くなるじゃろう。まさに強みを活かした評価じゃ。逆に生徒の評判が低く、それを真摯に受けとめられない講師については断固たる対応が必要になってくるじゃろうの。ドラッカー氏も真摯さの欠如は諸悪の根源となると言っておるしな」

 

「そうですね。急遽、昇給に繋げて生徒アンケートを実施するといろいろ混乱も起こるでしょうから、まずはフィードバックから自分たちの質の向上のためという名目で、生徒アンケートを実施してみます」

 

「ただし、担当している生徒の中から多くの入塾を決めた講師については、夏期講習会後に表彰したり、特別ボーナスを支給してもよいかもしれんぞ。それを聞いたら夏期講習会後半の疲労が蓄積している中でも、もう一踏ん張りできるじゃろう。昇給制度については今後、じっくり検討する必要はありそうじゃ」

 

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