【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
暦の上では秋ではあるが、気候はまだまだ夏が続いている9月。
いろいろなことがあったものの、安定した状態で2学期を迎え、生徒も落ち着いて勉強に励むことができている。
赤字経営からようやく黒字化に転じ、ここでゆっくりしたい気持ちがあるが、私の学習塾にはまだまだ課題点が多い。のんびりしている間はなさそうだ。
顧問税理士の天海さんからは、常日ごろから
『最も多くの人間を喜ばせたものが、
最も大きく栄える』
という徳川家康の言葉を聞いている。私も現状に満足することなく、もっともっと多くの生徒、多くの家庭を喜ばせることができるはずだ。
そのためにも早い段階から次の目標を定め、計画を立案し、実行に移す必要がある。早く動けば動くほど波及効果は大きいことが、これまでの取り組みの成功体験から学んだ。
かと言って、がむしゃらに行動しても成果には繋がらない。天海さんからは、
「しっかりとマーケットを観察し、
チャンスをうかがう姿勢が重要」
と釘を刺された。そこで熟考した結果、2学期一番先に行動すべき項目が定まった。
この2学期の目標のひとつは、中学受験生を増やすこと。マーケットを観察すると、実はここに今、ニーズがある。小学4年生や5年正から塾に通い受験勉強している生徒をこちらに引き込むことは難しいが、小学6年生の塾に通っていない受験生を動かすことは可能だ。
夏休みが終り、受験本番までのカウントダウンが始まったこの時期になると焦り始める家庭も少なくない。関西圏であれば1月中旬が受験期、都内であれば2月上旬だ。残った期間は3ヶ月、もしくは4ヶ月。合格偏差値に届いていない家庭は何か手を打たねば状況は変えられないと動き出す。
つまり
「この9月から、塾や家庭教師に依頼して
少しでも合格の可能性を上げたい家庭が
どんどん出現してくる」
ということだ。
ハード面ではオンライン授業のシステムをすでに導入し、授業は行ってきている実績はある。ソフト面でも学生アルバイト講師がこの夏に増えたことで、対応できる人数も増えた。オンライン授業であれば、都内・関西圏どちらもマーケットになるので、塾生増の可能性は大いに高まるだろう。
もちろん地元から都内の中高一貫校へ受験する生徒を直接指導することも可能だ。ここをタイムリーに、そして効果的にアピールしていくことが大事になる。チラシやハンディングでは波及効果は見込めないので、SNSを最大限利用する。学習塾や家庭教師などのポータルサイトも見直しして、こちらも大いに利用していきたい。
問題は講師の対応力である。中学受験といっても開成や灘、筑駒や渋幕、東大寺といった難関校は現状としては対応が厳しいだろう。正直、合格にほど遠い学力の生徒を短期間であの難問を攻略できるようにするのは不可能に近いからだ。そもそもそこまでの指導力は厳しい。
偏差値的には60未満で合格可能の学校で、現状の偏差値が55前後でもう一息といった生徒に標準を絞った方がいいのではないだろうか。そのためにも各学生アルバイト講師がどの科目、どこまでのレベルであれば対応可能なのかを再確認する必要もある。こればかりは受験指導の経験は必要だ。学生講師ながら経験者はいる。今回はその学生たちに大いに活躍してもらおう。そうすれば少なくとも10名の生徒は受付可能だ。
ただ、行動に移す前に天海さんに相談し、穴がないか、より効果的な方法はないか、そのアドバイスを受けることにしよう。