【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2022年も残すところ2ヶ月あまり。
学習塾としてはここから来年の4月までが、怒濤の繁忙期となる。
やるべきことを列挙してみると、
・小6と中3は受験→最後の追い込み、志望校合格
・中3の志望校面談→学力テストの結果や内申点から願書を提出する学校を決める
・12月から開催される冬期講習会→募集活動開始
・1月から毎週日曜に開催する志望校対策ゼミ→企画から告知まで初の試み
・新年度に向けた準備→説明会や新小6・新中3に向けた公開テスト実施
・退塾阻止→成果の上がらない生徒への学習面談
これらを日々の指導と並行して行っていく必要がある。
猫の手も借りたいとはまさにこのことだ。
学生アルバイト講師を雇い始め、レッスン以外の活動にも時間を割けるようになってはきているが、ほとんど自分で行わなければならないので、休日など到底望めない状態。
今年も大晦日・正月返上で仕事になるのは間違いない。
覚悟の上で起業し、自分自身で経営しているので、もはやこれが当たり前のルーティンになっている。
そんな中で次々と問題が浮上するのが、最近大きくシステムチェンジしたオンラインレッスン部門である。
特に石川が担当している生徒の家庭からは、ほぼ毎日のように連絡がきて、その対応にかなりの時間を割いていた。
内容は「模試の結果が上がっていない」というもの。
短期間で成果を上げることの難しさは再三話をして入塾許可したのだが、実際に始めてみるとクレームのような催促が止むことはない。
進学塾では志望校の合否判定をするような模試を毎週行っている。
テスト慣れも当然必要なので、できる限り参加してもらっているが、毎週同じような偏差値のため、憤りを感じているようだった。
なにせこれまでの取り組みとは180°変えて、かなりの時間と労力とお金を費やしているのだ。
少しくらい成績が上がってもいいものだと思うのだろうが、試験範囲が広く、基礎学力も安定していない状態では、そう簡単に努力が得点に表れない。
その不安や不満で、日々の取り組みもモチベーションが低くなってしまっている。
生徒自身はそれでも頑張ろうと歯をかみしめながら取り組んでいるが、母親の横やりが激しく、生徒の意欲をそいでいた。
「というわけで、当初の予想通りの展開になってきました」
私はそんな状況を顧問税理士の天海さんに電話で相談することにした。
天海さんはどんな時でも冷静で的確なアドバイスをしてくれるので、とても心強い存在だ。
「メインで担当している学生アルバイト講師とは話し合い済みなのかの?」
「ええ、ほぼ毎日、レッスンの終わった後で対応会議を行っています。ただ、石川としては成績には表れていないものの、かなり手応えを感じているようです。ノートの書き方、宿題の取り組み方、問いに対するリアクションの速さ、計算の正確性、どれをとっても成長してきていると。しかも自分からこういった問題を聞かれた場合はどうするのかという積極的な質問も受けるようになったと喜んでいました」
「家庭では、受験勉強を通じて何を身につけ、どう成長していくのか、そういった大切な点が見えておらずに目先の得点だけに目が行っているようじゃな。そこはしっかりと伝えていく必要がある。
松下幸之助氏の言葉には、
『無理に売るな。
客の好むものも売るな。
客の為になるものを売れ』
というものがあるが、
まさに今の努力が
生徒の将来の為になっている取り組みだと
伝えていくべきじゃろう」