【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
光陰矢のごとし、2022年も残すところ50日あまり。
世間では、クリスマスだ、帰省だ、大晦日だ、正月だと騒いでいるが、私の経営する学習塾では、冬期講習会だ、受験対策だ、受験だ、新年度生受け付けだと、その準備に翻弄されている毎日だ。
ひとまず学生アルバイト講師と全員と面談を行い、一人ひとりの話を聴き向き合うことで不穏な雰囲気は薄らいだ。
講師を辞めると言ってくる者もいなくなり、それぞれが与えられた業務や目標に対して集中できる環境になってきている。
今回の件で、どんなに忙しくても部下との距離感を常に一定に保つことの重要性を学ぶことができた。
次に解決すべき問題は、現在の中学3年生が卒業した後の穴埋め。
新年度を控えた3月から中学3年生の塾生23人が一気にいなくなるのだ。
次に受験生となる中学2年生はわずか2人しか塾生はいないので、まったく穴を埋められず、大幅な売上減となってしまう。
このままではオンラインレッスンに特化した学習塾になる可能性すらあった。
ホームページや学習塾の検索サイト、SNSも利用して告知はしているものの、中学2年生の反響がとにかく少ない。
中学1年生はイベントを打って対策した効果があって7人の増えたが、果たして同じことを中学2年生向けに行って効果が期待できるのだろうか。
「来年度1年間の売上だけではなく、今後の影響力を考慮すると、早急に手を打つ必要があるじゃろう。分析もしっかりとすることじゃ」
頼りになる顧問税理士の天海さんに相談すると、やはり何かしらの対応が必要だということがわかった。
「分析ですか?」
「マーケティング手法ではSTP分析が一般的じゃの。まずは
市場の細分化(セグメンテーション)、
そして
どの市場を狙うのか(ターゲティング)、
自社の立場の明確化(ポジショニング)
の3点じゃ」
「なんだか難しそうですね・・・・・・」
「全塾生がどの辺りに住んでいるのか、どんな共通点があるのか、それに対してこれまで関わりを持つことのできた中学2年生はどうなのか?」
「バレー部女子が中学3年生の塾生の核ですが、2年生は他塾に通っている生徒が多いそうです。2年生に人気があり、学年による棲み分けが完成してしまっている状態です。この点は他の中学校にも当てはまるようです。各学校の上位陣は大手の学習塾が独占していて、受験まで残り1年となると動かすのは厳しいと思います。」
「そこを取り合うのは難しそうじゃな。であれば、もっと広い市場に目をつけた方がよいじゃろう。
特に潜在顧客が多い市場じゃ」
「潜在顧客?」
「はじめさんの学習塾のサービスも知らないし、その良さもまったく知らない顧客層のことじゃ。2年生が多く通っている他塾の情報も入手して、サービスの差別化もよりはっきりさせた方がいいじゃろう。受験、受験とはやし立てるよりも、別な視点で立ち位置を決めた方が2年生には反響があるのかもしれぬ」
「中学2年生の市場調査をもっと入念に行うということですね。そしてそこにどんな効果的なアプローチができるかを考えろと」
「人を動かすことで有名なデール・カーネギー氏の言葉には、
『ビジネスで成功する一番の方法は、
人からいくら取れるのかを
いつも考えるのではなく、
人にどれだけのことをしてあげられるのか
を考えることである』
というものがある。現在の塾生の繋がりだけでは集客が厳しいのであれば、潜在顧客へのアプローチ方法を検討して実践するのも必要なことではないかの」