コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか95  不況・景気後退といった逆境に対する意識の持ち方」

 

今回のポイント
 災い転じて福となす 

 

 

あれよあれよという間に冬期講習会は終了を迎えた。

3期制の学校は3学期のスタート。

中学受験生にとってはいよいよ受験本番。

高校受験生にとっても最後の追い込みの時期となる。

 

今日は午前中の空いた時間を使って顧問税理士である天海さんの事務所を訪ねた。

 

「どうしたんじゃ? 浮かない表情をしておるの。体調でも壊したのか?」

 

「いえ、疲労は溜まっていますが、体調面ですぐれない部分はないです。問題は今回の冬期講習会の誤算ですね」

 

「たくさん生徒が集まったと喜んでおったはずでは? なにか授業で不始末でもあったのか?」

 

「授業も生徒対応もとても感謝されましたから、講習会自体はまずまず成功だったと思います。学生アルバイト講師も全力で頑張ってくれました。特に大きく成績を伸ばした塾生も現れて驚きもありましたし」

 

「それでは何が問題なのじゃ?」

 

「折からの円安や物価高騰で、入塾まで決断してくれるご家庭がほとんどなかったんです。中学3年生は卒業間近ですから、入塾については他の学年が対象になるのですが、中学2年生・1年生ともに入塾数ゼロでした。小学校5年生で1名の入塾がありましたので合計ゼロは免れたものの、入塾率は5.9%です。20%はいけるだろうと見込んでいただけに頭を抱えています。これでは今の中学3年生が卒業していく穴を埋めることができません」

 

 

「エネルギーの高騰だけではなく、食材も値上がりしておるから生活直撃じゃ。インフレの分だけ給料が上がれば良いのじゃろうが、日本経済はまだまだそこまで至ってはおらぬようじゃしの」

 

「日銀が長期金利の変動幅を拡大したことで、住宅ローンの利息が増えることを気にされているご家庭が多かったです。政策金利が利上げになったわけではないですが、諸外国の状況を見るといつそうなってもおかしくないですからね」

 

「節約できる部分はなるべく節約するという傾向じゃな。そうなると、なるべくであれば塾に通わす費用も節約したいということか」

 

「ええ、入塾は新年度になってから検討するという返答ばかりでした。しかし、正直新年度になっても即始めようとなるかどうか、状況によっては春になってもまだ入塾を見送るケースも多くなるような気がします」

 

「それで表情がすぐれぬわけか。気持ちはわからぬではないが、多角的な視点が必要じゃぞ」

 

「多角的な視点、ですか?」

 

「経営者として大成功を収めた松下幸之助氏は、

 

景気が悪いときこそ

 

お客さんは良い商品を購入しようと

 

敏感になる

 

から、

 

好況よし、不況さらによし

 

と考えておったそうじゃ。

 

この逆境こそが

 

本当に価値のある学習塾を選ぶ

 

きっかけになるじゃろう

 

はじめさんの学習塾が注目されるむしろ好機じゃな」

 

「なるほど、災い転じて福となすということですか。確かに暗い気持ちになってしまっては悪循環になってしまいますから、財布の紐が固くなっている状態もポジティブに受け止めた方がいいですよね」

 

「災いを転じるといえば、日光東照宮近くの日光山輪寺で秘仏である鎮将夜叉尊が9年に一度開帳されるの。九星術では、今年は五黄中宮にあたり最も荒れる1年とされておる。御利益を信じ、災いを転じて福となす法力を持つ鎮将夜叉尊に願いを託す人も多いじゃろう」

 

 

「それでは私も合格祈願を兼ねて日光に参拝に行って、この暗い気持ちを切り替えてみます。あれ、そういえば、天下太平を願って鎮将夜叉尊を収めたのは、確か江戸期初期に家康の側で活躍した天海大僧正だったような記憶が・・・・・・」

 

そう言うと、お茶をすすっていた天海さんが意味ありげに微笑んだ。

 

「うむ、天海という名と松平姓とは何かと縁が深いのじゃよ」

 

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