【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
生徒に改めて目標を確認し、志望校に合格したいという強い動機を生み出す機会として新しいイベントを開催した。
私の学習塾をこの春に卒塾し、志望していた高校に通っているOBやOGを呼んで、その体験談などを語ってもらう会である。
無料のイベントとして設定し、塾生はどの学年であっても親子共々参加可能。
少しでもこの地域の生徒たちの勉強への意欲アップに貢献していきたいという願いから、一般生にも無料開放した。
GWに突入する前に開催したいということで、平日19時に設定。
これが思っていた以上に盛況で、塾生の9割近くが親子で参加を希望してくれただけでなく、一般生の申し込みも20人以上で、中には初めて私の学習塾に来てくれる生徒もいる。
急遽の開催にもかかわらず、これだけ一般生の参加があったのは、やはり卒塾生たちが後輩に慕われていたからだ。
多くは女子バレー部の主力選手だったので同じ部活からの参加が多いのだが、まったく体育会系の部活に所属していない一般生もいる。
卒塾生の兄弟姉妹がその友人を誘ってきてくれたケースもあった。
この盛況ぶりに感動しているのは私だけではない。
アルバイト講師一同も同じくらい喜び、うっすら涙を浮かべている者もいるほどだった。
自分たちの活動が、生徒を志望校合格まで導けただけでなく、もっと大きな波及効果を周囲に与えることができていることに「この仕事をやってきてよかった」という強い感動を生んでいる。
また、卒塾生が嫌な顔せずに進んでこのイベントに参加して、「こうした方がいい」、「ここで自分がこんな話をしたいと」と積極的だったことも、自分たち講師と卒塾生の絆の強さを感じることができて本当に嬉しかった。
このイベントには顧問税理士の天海さんも駆け付けてくれた。
教室内は親子で満杯で、借りてきたパイプ椅子の置き場ももうないほど埋め尽くされている。
その盛況ぶりに天海さんは驚いていた。
ここまで人が集まったのは初めてのことなのだ。
まさに定員いっぱい。
これだったら2日に分けて開催した方が良かったかもしれないなと、アルバイト講師の石川と笑顔で話をした。
この企画は石川の発案で、卒塾生を集めて段取りを進めてきたのも石川である。
もはや石川が副塾長といっても誰も不満を言わないだろう。
それだけの存在感を発揮し続けていた。
「はじめさん、これはまたずいぶんと盛り上がっておるの。すごい熱気じゃないか」
「ええ、天海さん、私も驚いています。準備は本当に短期間で、パワーポイントなどの資料も用意していない本当に卒塾生の語りと質疑応答だけの合格報告会ですから」
「そういったシンプルな触れあいだけで十分かもしれんの」
「卒業生を筆頭に、講師陣や兄弟生の協力があってこその盛況です。私は本当に人に恵まれているなと感じました」
「感謝の気持ちは大事じゃの。今思い出した言葉がある。アメリカ大統領の顧問官を歴任し、鋼鉄王カーネギーの成功哲学を後世に伝えたナポレオン・ヒル氏の
『協力とは愛や友情と同じく、
与えられることで得られるものである』
という言葉じゃ。
はじめさんがそれだけ真摯に生徒や家庭、
そしてアルバイト講師に向き合い、
情熱を注いできたからこそ、
みながこんなに協力してくれているのじゃろう」
「今回のイベントを開催して、もの凄く強く背中を押された気分です。これだけ後押ししてくれる人々がいるのだから、まだまだ前に進めると確信しています」