経営についていつも相談させてもらっている顧問税理士の天海さんから、経営者にとって新年度の決意表明がどれほど重要で、どうあるべきかアドバイスを受けた。
その点について改めて自分なりにしっかりと考え、決起会の際にみんなに伝えることで講師陣の表情は明らかに引き締まった。
やはり経営者は大切な役割を担っているのだと身に染みた瞬間だったのだが、実はこの話はこれだけでは終わらない。
世界経済・日本経済の不安定要素が強まり、物価高も重なり、人件費にこれ以上避けないため、教室に来る生徒対応の学生アルバイト講師を増やすことは厳しい。
しかし、オンライン講師については何人在籍していても困ることはない。
レッスンのコマ数働いた分だけの給与を支払うので、人が増えても人件費は増加しない。
生徒や家庭にとっては選択できる講師が多い方が魅力的だ。
オンライン家庭教師を経営している企業が年々増えてきているが、中には700人も講師が在籍しているところもあるほどだった。
ということで、在籍するオンライン講師を10名から20名は増やしたいという目標のもと、自社のWebサイトで求人募集を更新。
塾業界の求人サイトの求人情報も一新した。
市場が全国ということで反応は速い。
1日で8名の問い合わせがあり、塾長である私が直接採用面接すべく日程調整を行う。
この中のひとりがちょうど先週、700人在籍している企業の採用面接を受けたという話をしてくれた。
学歴があり、実際に個別指導の学習塾で教室長を務めていた実績もある。
物腰も柔らかく、生徒から信頼される人柄であろうと推測できた。
人材不足の今の時代ではこういった優秀な人材の確保は競争だ。
かといって個人経営の私の学習塾が、他の企業よりも高い給与を払えるわけではない。
やはり大きな企業と比較されると厳しいかと半分諦め気味に面接をしていたのだが、意外にもこちらで働きたいという希望をむこうから言ってきた。
先週受けた企業が不採用だったのかと思って聞いてみたが、しっかり採用されていた。
先方は断って私の学習塾で働きたいという要望である。
話に聞くと先方は2000人ほどの生徒が利用しているらしい。
稼いでいる講師だと月に50万円に達するとか。
こちらではさすがに実現できない数字だ。
しかし、面接の内容が大きく違ったようで、その点が評価された。
先方はほとんどがシステムの話で、手数料30%の登録と、手数料45%の登録についての違いばかりを説明されたという。
30%だとまったくサポートなし。
家庭に送信される記事に掲載されて生徒がつきやすいのが45%。
とにかく1年半は45%でやってほしいとしきりにアピールされたとのこと。
要するに稼いだレッスン料金の半分が徴収される。
しかも、面接時には実際にどんなレッスンをするのかといった中身はまったく触れられず、そちらは完全に個々の講師頼み。
そして何より違和感を持ったのが、企業理念についての話がなかったというのだ。
教育を通じてどう社会貢献したいのかといった内容がなく、経営者が稼ぐことしか頭にない面接に失望したと言う。
一方で私は企業理念の話を一番にした。
天海さんからアドバイスを受けた先日の決意表明とほぼ同じような話だ。
何よりそれが響いたのだそうだ。
なるほど、私は以前に天海さんから聞いていた話を思い出した。
松井証券の社長を務めた松井道夫氏の言葉で、
『部下と一緒に苦悩するのが面倒になって、
適当にやってくれよと思うと、
部下は上司の吐き出す
そういう空気を敏感に読むものです』
を引用されていた。
経営者の意識や価値観は、
見透かされているとは言えないまでも、
空気で相手に伝わり感化するものなのだ。