海外の市場に注目し、海外に在住している日本人向けにオンラインレッスンのコマーシャルをしたところ2件の問い合わせがあった。
1件はバンコク、もう1件はフランス。
ちなみにフランスからの問い合わせは兄妹セットでの申込である。
私自らがすぐにコンタクトをとってレッスンを行い、保護者を含めた三者面談も実施。
どちらの家庭も今週から本格的にスタートすることになった。
バンコクの生徒は小学6年生で12月に日本で受験。
受験までのレッスンは月・木の週2回。
フランスの生徒は妹が小学4年生で週2回、兄が中学2年生で週1回と決まった。
状況を見てコマ数を増やしたり、科目数を増やしていくことになるだろうが、ひとまずは算数・数学のみのレッスンとなる。
私は顧問税理士の天海さんとの昼食で早速その件を伝えた。
「ほう、反響はあるだろうと話しておったが、もう決まったのか。円安の影響もあるじゃろうから海外に在住している日本人にとっては絶好の機会なのかもしれんの」
「勤めている企業との契約で、子どもが受験になる際に帰国すると決まっているそうです。ですから将来的な予定はたてやすいようですね」
「実際にレッスンをしてみて日本の生徒との違いはあったのかい?」
「いくつかありましたね。興味深いのは英語の力が飛び抜けて高いという点です。小学6年生で、すでに英検2級を取得する実力を持っています。日本だと高校卒業レベルの英語ですよ。中学2年生の生徒は次に英検1級を受けると言っていました。ですから英語のレッスンはまったくニーズがないです。驚いたのは、志望校の帰国子女枠のコース受験条件が英検2級以上取得していることになっていたことです。英語はできて当然という前提になっていますね。このあたりの力には大きな差がありますよ」
「海外に在住しているから英語が必要ということだけではなく、親御さんの求める教育水準も高いの」
「明日はアメリカに住む中学3年生の女子生徒のレッスンが入りました。三者面談を実施して、こちらもすぐに正式なレッスンが始まると思います」
「なかなか順調じゃが、問題はないのか?」
「それが1点だけ大きな問題がありまして、それが時差なんです」
「時差か。バンコクとはさほど時差はないじゃろうがな」
「ええ、バンコクとは1時間の時差ですからレッスンも日本時間21時から始められますので大丈夫です。しかし、フランスが7時間も時差がありまして、妹のレッスンが日本時間の0時、兄が深夜1時からなんです。しかもサマータイムが終わると1時間後にずれ込みますので、深夜1時と2時スタートで、終了は深夜3時になります」
「それは日中の業務との両立は難しいの。かといって海外の顧客に無理を言って日本時間に合わせてもらうわけにもいかんしな」
「少なくとも正社員の石川や酒井には負担が大きくなりますので任せられないです。アルバイトに担当させるにも深夜割り増しが発生して人件費の負担が増すので、ひとまずは私が担当していくことにしました。ただし、生徒が増えればやはり私以外の担当者も必要になるかと」
「フランスの生徒が週2回とはいえ、はじめさんの体調管理が心配じゃな。
時差の大きいヨーロッパやアメリカの
顧客のニーズが高いと
今後の経営の仕組みも再検討が必要になるぞ。
しかし、そのチャレンジ精神は立派じゃ。ヨーロッパの実業家でコングロマリット・ヴァージン・グループの創設者であるリチャード・ブランソン氏の言葉に
『成功は挑戦を恐れない者のものだ』
とあるが、はじめさんのチャレンジ精神はまさにその心構えじゃな」