【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
いよいよ今年度の最終仕上げ&次年度のスタートとなる春期講習会が始まった。
費用は90分×4回の授業で1万円。個別指導がメインではあるが、春期講習会は新学年のスタートダッシュを決めるために、新学年の予習単元を行う。そのため学年が同じであれば、一斉に授業を行うことが可能。演習時間も余裕をもって設定し、個別に指導できる時間を確保している。
参加人数は、新小6で5名、新中1で4名(2名は塾生)、新中2が3名(2名は塾生)、新中3が25名(10名が塾生)ということで、総勢37名での開催である。なかなかの盛況ぶりだ!
2人の学生アルバイト講師にも効率良く授業を手伝ってもらい、午前から午後にかけては小6~中2、夕方以降は中3ということでスケジュールもうまく組むことができた。
問題はこの超短期の講習会の中で、入塾まで誘導できるかどうかである。
はっきり言って、年間で春期講習会だけ受講するという家庭は少なくない。予習単元をやっておきたいというニーズもあるのだが、それ以上に期間が短く、費用もかなりリーゾナブルだからだ。こういう家庭は入塾については考えておらず、完全に割り切って春期講習会だけを受講している。学習面談で話をしても、授業後に家庭に電話をして塾での様子や今後について話をしても、なかなか入塾について良い感触を得られることができない。
現在は春期講習会も終盤にさしかかっており、学校も入学式が迫ってきているのだが、未だに入塾はひとりも決まっていなかった。こうなると、さすがに気持ちも焦ってくる。
学生アルバイト講師にも入塾へ誘導する意識やその手法について研修で伝えているのだが、授業や質問受けなどに一生懸命になりすぎていて、入塾についての報告はほとんどない。2人にとっては初めての本格的な指導なので、入塾について考える余裕はないのは無理もなかった。
実際のところ、私自身もこれだけの人数になると、授業の対応で目一杯になっていて、営業活動まで時間がとれていない。このままいくと塾生数は変わらぬまま、新年度を迎えることになるだろう。
生徒も全員帰宅し、夜もかなり遅くなっていたが、ここはどうしても天海さんのアドバイスを聞きたくなり、電話をした。
「すみません夜分に、お休みになっていましたか?」
「まあの・・・・・・ なんじゃ、なんかあったのか?」
「いえ、それが23名の講習会生うち誰もまだ入会していなくて、まったく動かないんです」
「冬期講習会にも参加している生徒で、新年度から始めるという確約をもらっていたのが3名ぐらいいたんじゃなかったかの?」
「そうなんですよ。そのはずだったんですが、そこもまだ決まっていないんです。今更になって、夏に部活を引退した後に入塾しようかと言い出す始末で」
「あまりしつこく入会活動をすると、逆効果になって今後の講習会にも参加してもらえなくなるから気をつけた方がよいぞ」
「何か良い策はありませんか?」
「塾生に配布する新年度のテキストはどうなっておるのじゃ?」
「春期講習会の最終日に配布しようかと思っています」
「であれば、前倒しした方が良いじゃろう。
塾生が新しいテキストを受け取って
やる気になっている様子を見て、
気持ちが変わる生徒も出てくるはずじゃ。
新年度テキストのメリットなども簡単に紹介してアピールすれば、その効果も高まる。
まずは生徒自身の気持ちを
変えるきっかけを作ること。
生徒が始めたいという気持ちになって、家庭で親御さんにその気持ちを伝えることができれば、動かない家庭も動く可能性はあるぞ」