※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「お疲れ様です。時間短縮でこのお店のアルコールの提供は、あと1時間だけのようです」
ショウ「そうか、待たせて悪かったな。早速メニューを頼もう」
マモル「あれ、先輩、また違うマスクをつけていますね。そのマスク、何か特別な機能でも備わっているんですか?」
ショウ「ああ、これか。これも前のと同じで洗える抗菌マスクなんだが、違うのは耳ひもにアジャスターが付いているところだな。これだと長時間マスクをしていても耳の部分が痛くならないんだよ。最近じゃ家に帰ってもマスクしっぱなしだから、できるだけ負担の少ないものにしたくてな」
マモル「確かに以前よりもマスクをしている時間は長くなっています。それにしても、短期間でマスクもどんどん進化していきますね。つい最近まで品薄だったのが嘘のようです」
ショウ「売れ筋の商品でもあるからな。競争原理でどのメーカーも開発に開発を重ねてくるだろう。コロナ禍で厳しくなった企業もあれば、環境に適応して発展していく企業も誕生してくる。春先に話をしただろ。転換期には、環境に対応できるものが生き残っていくんだよ」
マモル「この1年のビジネス業界を見ていて、先輩の話がよく理解できました。しかし、クライアントの中にはそう器用には対応できないところもたくさんあります。やはり環境に適応できないビジネスは滅んでいくのでしょうか?」
ショウ「そうとも言い切れないだろう。このコロナ禍で三密は厳禁となって、映画館の客足はばったり途切れた。これはハリウッドだって同じ状況だ。しかし、この中で東宝の興業収益は前年比1000%を突破している」
マモル「凄いですね。10倍以上ということですか。鬼滅の刃の効果ですね」
ショウ「そうだな。売り出し方も上手だったが、ストーリーの厚み、映像の迫力と美しさ、そして声優陣の力量、どれもがスバ抜けていた。だからこそリピーターもかなりの数にのぼったことだろう。別に映画館自体が作り替えられているわけでもなければ、特殊な上映技法が使われているわけでもないし、これまでとはまったく違うサービスを提供しているわけでもない。それでもこれだけ記録的な成果をあげることはできる、ということを東宝は証明してみせたな」
マモル「ビジネススタイルを大きく変化させなくても、環境に適応できるということですか?」
ショウ「鬼滅の刃の4巻、第33話に面白いエピソードがある。技を一つしか覚えられない吾妻善逸に対して、師匠である桑島慈悟郎が語る回想シーンだ。
『いいんだ善逸。お前はそれでいい。
一つできれば万々歳だ。
一つのことしかできないなら、それを極め抜け。
極限の極限まで磨け』
とな。実際に善逸は一つの技を極限まで極めて強敵を倒す」
マモル「それが善逸の霹靂一閃という技ですね。一つのことしかできないならそれを極め抜けか…… そう考えると、東宝の成功もそれを体現しているのかもしれません」
ショウ「とことんまで自分のスタイルを貫き通して、極限まで磨くことができれば、それもまた急激な環境の変化に対応することができるひとつのやり方なのかもしれないぞ。俺は新しい視点を学んだ気がするな」
マモル「コンサルタントとして、クライアントを成功に導けるかどうかは、環境に適応することだけでなく、長所を極限まで磨くような助言もあるということか。そうなると、コンサルタントとしての自分自身を極限まで磨けているかどうかも問われますね。もっともっとやれることの精度を高めていかなきゃならないですね」