※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「先輩、パエリアを食べながらオンライン飲み会とは豪華ですね。どうしたんですか?」
ショウ「デリバリー用のアプリで検索したんだが、どこも混み合っていて、時間に間に合う店がここしかなかったんだよ」
マモル「コロナ禍では同じ飲食業界でも、居酒屋とデリバリーに特化した店では売上に大きな差が生れていますね。店の仕組みを変えるといっても簡単じゃないなというのは、コンサルタントをしていてとても感じます」
ショウ「変革を成功させるにはいろいろな要素が必要になるからな。ただ仕組みを変えたとしても、それで成果が出るとは限らない。組織改革も一緒だろう。経営陣を一新しただけでは変革は成功しない。ハード面とソフト面の両方をしっかり変えてこそ効果に現れるものだ」
マモル「ハードとソフトか・・・ 仕組みを変えるだけでなく、そこで働く人の意識も変える必要があるということですね」
ショウ「だから変革はたいへんな作業なんだよ。労力もかかるし、時間もかかる。既存の状況を変えたくないという反発もあるしな。今までの居心地のいい、快適な環境からわざわざ抜け出してリスクを冒したくはないというのは人の心理さ」
マモル「その快適な環境が、昔先輩がお話されていたコンフォートゾーンですね。そこから勇気を持って外に踏み出す勇気も変革には必要ということですか」
ショウ「人も組織も企業も、踏み出した先のラーニングゾーンに適応していく力がこれから先はますます試されることになるだろう。成長するためにはラーニングゾーンに身を置く必要があるからな」
マモル「自分自身を奮い立たせつつも、周囲に理解を求めることも重要ですね。周囲も足並みをそろえて外に踏み出せるかどうかか……」
ショウ「組織改革はそこを説得していくのに時間がかかる。変革の重要性を伝えていくだけではなく、到達した先を具体的にイメージしてもらうことも大切だろう。共感できる仲間を増やしていきつつ、少しでも成果が出たことをアピールしていく努力も必要だ。そういった地道な取り組みや働きがけの先に変革の成功はあるんじゃないか」
マモル「そうなると自然とコミュニケーションも活発化されて、いろいろな人からいろいろなアイディアが出てくるようになりますね。単なるトップダウンの組織よりも現場の声を反映できるから、新しい環境や新しい問題に対応できる力も増します」
ショウ「企業としても大きな成果が期待できるようになる。だからこそ組織改革は欧米じゃ専門分野だ。外部に委託してプログラムを練って組織改革を行っていく。これから先、日本でもそういったアウトソーシングも増えていくだろう」
マモル「そういった新しい組織から、世界に通用するイノベーションは生れてくるんでしょうね」
ショウ「経営学の父と呼ばれているピーター・ドラッガー氏はイノベーションについてこう述べている。
『昨日を守ること、
すなわちイノベーションを行わないほうが、
明日をつくることよりも大きなリスクを伴う』
とね。まさに現代はそういった時代だよ。これまでの仕組みに固執していた方が、はるかにリスクが高い。昨日を守ることに一生懸命になっていたのでは生き残れないからな。否が応でもコンフォートゾーンから追い出されることになるだろう」
マモル「そのために重要なのは、目標を組織で共有できるか、互いに承認し合い、共感できるような職場環境を作れるのかということですね。組織構造や人事評価といったハード面と、社員の意識改革といったソフト面の両輪を回していかなければなりませんね」