※これは独立したての経営者であるマモルと先輩経営者のショウの物語です。
ショウ「マモルの方から食事に誘ってくるとは珍しいな。従業員が来るのは明日からだったんじゃなかったか?」
マモル「そうなんです。それで、昨日も今日も落ち着かなくって……」
ショウ「経営者のマモルが今からそんな不安がってどうするんだ? 能力も意欲もあるメンバーだって、喜んでいたじゃないか」
マモル「そうなんですが、実際にリーダーになったことがないので、どうしても心配になってしまって。先輩は、以前、コミュニケーション上手は聞き上手っていう話をされていたじゃないですか、だから従業員の話を聞く姿勢は大切にしようって決めています」
ショウ「いいじゃないか。それのどこが心配なんだ?」
マモル「でも、経営者って、熱く語って引っ張っていくリーダーシップも必要だと思うんです。特に最初は。大袈裟なぐらいがちょうどいいかなとも思ったりして」
ショウ「なるほどな。リーダーシップも様々だからな。マモルの気持ちはよくわかるよ。俺もつい最近までそうだったから」
マモル「え? 先輩って激情タイプの経営者でしたっけ?」
ショウ「社内に活気を出したい。他のメンバーにも元気で積極的に頑張ってほしい。そんな思いで声を張り上げていたからな」
マモル「今は違うんですか?」
ショウ「ああ。あえて抑えているよ」
マモル「どうしてですか?」
ショウ「顧問税理士に指摘されてさ。経営者はもっと自分の感情をコントロールできなくちゃ成功できないって」
マモル「そういったアドバイスも顧問税理士の方ってされるんですね」
ショウ「経営者になると誰も叱ってはくれないからな。うちの顧問税理士のような耳の痛いことを忠告してくれる存在は絶対に必要だよ。じゃないと、いつの間にか自分本位の会社になってしまうんだ。商品もサービスも相手本位じゃなければ顧客の心は動かせない。自分本位は大敵だぞ」
マモル「でも、自分の思いや夢を語るのは、リーダーの重要な役目ですよね」
ショウ「もちろんさ。まあ、いろいろと経験してみなくちゃわからないこともあるだろう。まずはマモルの思った通りにやってみるといいよ」
マモル「ただ、そうすると、なんだかことさら自分を大きく見せようとしている気もしちゃって……」
ショウ「ジェームズ・アレン氏の言葉を伝えておくよ。イギリスの作家で、自己啓発に関しては、デール・カーネギー氏にも強い影響を与えた人物だ」
マモル「まったく聞いたことのない名前ですね。どんな言葉なんですか?」
ショウ「ジェームズ・アレン氏は、『人間は穏やかになるほど、より大きな成功、より大きな影響力、より大きな権威を手にできる』と述べている」
マモル「穏やか。物静かな感じですか?」
ショウ「じっくりじっくりと徳を積めるような人だろうな。決して熱しやすく、冷めやすい人ではないな。大声を張り上げる人でも、自分を大きく見せようとする人でもないだろう」
マモル「はあ。メンバーを引っ張っていかなければならない立場にあって、穏やかにしていられるものでしょうか。会社として成果が出せなければ給与も支払えなくなってしまうのに」
ショウ「いや、腑に落ちないことを無理にしようとしても難しいだろう。胸にしまっておけばいい。いつかこの言葉を思い出す日がくるかもしれないからな」
マモル「その言葉って、顧問税理士の方が話されたんですか?」
ショウ「そうだよ。その言葉のおかげで俺は自分の現状や、大きな課題点に気がつくことができたんだ。まあ、俺の過去の話はまた改めてだな。マモルは思う存分、明日からの新しい環境で頑張ってみろ!」、
マモル「はい! 目標に向けて一致団結できる会社を目指します!」
ショウ「次にどんな話を聞けるのか楽しみにしてるよ」