※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『従業員の自律性を養う方法』になります。
マモル「先輩、前回お話した後で、顧問税理士さんにも、自律性について何か採り入れられる点はないか相談してみました」
ショウ「何か新しい仕組みを導入するのか?」
マモル「それよりもまず、どんな時に人は自律的になるのかを考えてみました」
ショウ「自由な時だろうな。管理されずに行動できる時だ」
マモル「ええ、でもただ自由だからといって自律的なのか、という疑問があります。そこで登場したのがフローでした」
ショウ「フロー。充実している精神状態のようなものか?」
マモル「そうです。フローの状態では、人は時間や場所、自分自身の存在さえ忘れるような感覚になるそうです。そしてきわめて高い集中力と満足感を生み出します」
ショウ「優勝したような成果を出したスポーツ選手が、ゾーンに入ったとよく言っているが、それと同じような感覚だな」
マモル「それには簡単過ぎず、かといって難し過ぎず、やや背伸びしなければ到達しないような課題が必要です。確実に努力を要します。だからといって与えられた課題ではない。あくまでも状況や活動を自分でコントロールしている感覚がなければいけません」
ショウ「なるほど。まさにフローの名付け親であるチクセントミハイ氏の提唱通りの概念だよ」
マモル「このフローを体験できる職場こそが、自律性を育むのではないでしょうか」
ショウ「確かにマネジメントにフローの概念を採り入れようと考えたステファン・ファルク氏は、スウェーデンの国有運送企業グリーン・カーゴ社に引き抜かれ、初めて黒字化に成功しているな」
マモル「そうなんですよ。彼は、マネジャーたちに月に一度の従業員との面談を求めています。仕事が手に負えなくなっていないか、興味を持てず失望していないかを確認し、仕事の割り当てを改善したんです。それがフローの状態を作り出す鍵だと考えます」
ショウ「フロー中心主義のマネジメントか……」
マモル「結果として業務時間の20%は自分のしたい仕事をすることに費やしたり、時には24時間すべてをそこに充てる必要もあるかもしれませんが、まずは従業員の話を聴くということを徹底していくべきなんです」
ショウ「うーん」
マモル「仕事が義務になってしまっているのだとしたら、フローの状態になることはないでしょう。その時は20%ルールや、フェデックス・デーといった自由に作業できる時間を設けていかなければなりません」
ショウ「まずはどう感じているのか、聴くことから始めるのか。うん、いいんじゃないか。それこそまさに自律性を養う職場だな」
マモル「賛成してもらえて嬉しいです」
ショウ「ロシアの文学者として有名なマクシム・ゴーリキー氏の言葉を思い出したよ」
マモル「あの、どん底という作品の著者ですね。幸せを求めてあがきまわる庶民たちの話でしたね。なかなか救われない話でしたが」
ショウ「ああ。彼のその作品の中の言葉に、
『仕事が楽しみなら、人生は極楽だ。
しかし、仕事が義務なら、人生は地獄だ』
とある」
マモル「仕事が義務なら、人生は地獄ですか……」
ショウ「そうならないように、経営者側が従業員たちに積極的にかかわっていくことは重要かもしれないな。仕事が楽しみになれば、自然とフローを体験できる機会も生まれてくるだろう」
マモル「顧問税理士さんと話をしていて、改めて、経営者にとって、従業員の話を聴く時間は必要だと思いました。従業員がどうすればフローを体験できるのかを意識しながら、話を聴く時間を作っていきます」