※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『従業員の費用対効果』になります。
ショウ「その後、どうだい? 従業員との対話で、フローを作り出す職場のヒントは見えてきたか?」
マモル「それが、予想外の展開で……」
ショウ「予想外? また橋本さんか?」
マモル「いえいえ、橋本さんはモチベーション高く、自発的に行動してくれているので問題ないです。困っているのは事務員の木梨さんですね」
ショウ「28歳の女性だったな。確かコミュニケーションが苦手とか」
マモル「ええ。それでもこちらが聴くことに徹することで、いろいろ話をしてくれるようになったんです」
ショウ「もうコーチングのコツを掴んだのか、早いな。それでどこが問題なんだ?」
マモル「かなり不満を感じているようなんです。給与面ですね」
ショウ「それは意外だな。マモルの会社はかなり待遇はいいと思ったんだが。もっと要求しているのか?」
マモル「それが、逆なんですよ。彼女はうちの会社の売り上げや人件費などを把握していますからね。正直かなり苦しい状況です。そんな中で、彼女は自分が給与に見合った働きができていないことに心苦しさを感じていました」
ショウ「ほう、そういったケースもあるのか。で、実際のところ、木梨さんの人件費に対する費用対効果はどうなんだい?」
マモル「彼女は営業スタッフではありませんからね。あくまでも事務なので、給与コストの何倍の利益を生み出しているかは計算しにくいです」
ショウ「顧問税理士は何と言っているんだ?」
マモル「確かに今回の無料説明会やサイトのブラッシュアップ、企業コーチングなどは、外部委託が多かったのでコストがかかりました。そこから即成約に繋がるような動きもありません。CPA(Cost Per Action)はかなりの赤字です。コスト面には人件費も含まれています」
ショウ「改善の余地ありと言われたわけだ」
マモル「このままだと経営は厳しいと。ただそれは以前からわかっていたことですし、それを承知でチャレンジしています。短期で見たら赤字でも、長期だと必ず黒字にできると信じています」
ショウ「そうだったな。その覚悟は俺もわかっているよ。でも、木梨さんは?」
マモル「とても不安を感じています。状況が改善されているとは、経理上の数字で考えるのは難しい状況ですから」
ショウ「事務だと直接的に成果に結びつくような働きも難しいからな」
マモル「給与を下げることは可能です。ただ、それが彼女のモチベーションに繋がるのかどうか。長期の視点で黒字化を目指すのであれば、他の方法を考えるべきだと顧問税理士さんにはアドバイスいただきました」
ショウ「なるほど。スイスの政治家で法学者でもあるカール・ヒルティ氏の言葉には、
『我々が悩める人に与えることが
できるいちばん正しい助力は、
その人の重荷を取り去って
やることではなく、その人が
それに耐え得るよう、
その人の最上のエネルギーを
呼び出してやることである』とある」
マモル「最上のエネルギーを呼び出すことですか…… やはり本当の意味で彼女のパフォーマンスを発揮できるようなモチベーションの高め方が必要ですね」
ショウ「自分がこの会社の発展にしっかり貢献できているという実感や自信が必要だろう。そうすればさらに木梨さんのパフォーマンスは向上するに違いない。どうかかわっていくのか重要だな。失敗すれば自主退職もありえるぞ」
マモル「もう少し彼女の話を聴いてみたいと思っています。なぜ僕たちが経営に専念でき、橋本さんたちが営業に専念できているのか、考えてもらうんです。彼女の必要性を伝えるのは簡単ですが、一番のポイントは、やはり彼女自身で問題の解決策に気づくことでしょうから」