※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『従業員育成の先行投資』になります。
ショウ「おお、マモルお疲れさん」
マモル「先輩、お疲れ様です」
ショウ「いやー、マモルと事務の木梨さんがその後、どうなったのか気になってしまってな。さらにいろいろ話をしてみたのか?」
マモル「そうですね。彼女はかなり数字に詳しくて、自分の給与だけでなく社会保険料、労働保険料、通勤手当や賞与なども込みで粗利益率を計算して、年間600万円以上の売り上げ増がなければ雇った価値はないと話していました」
ショウ「おお、まさに経営者側の視点だな。しかもシビアに自分を追い込んでいくタイプだ」
マモル「僕はできるだけ彼女の話にしっかりと耳を傾けました。表情を見ながら、心で受け止めるようにしたんです」
ショウ「早速コーチングの成果が出てきなたな。それで?」
マモル「人件費のコストをもっと抑えるべきだとアドバイスがありました。確かにそうすれば会社の利益は増えますからね。そこで僕は、人件費のコストを抑えずに利益を増やす方法はないか訪ねてみたんです」
ショウ「なるほど。より成果を出す方法を木梨さん自身に考えてもらって、木梨さんの成長を促す作戦か」
マモル「僕は、彼女が本当にパフォーマンスを発揮できたら、もっといろいろな方面で活躍できると思うんです。事務の処理は現状の正確さとスピードで充分なんですが、そこから営業担当にフィードバックできる点もあると思います。それは欠けています。彼女がもっと積極的に動いてくれれば、職場はより活性化されますし、営業面へのサポートも充実します。僕のタスクも彼女に任せられる部分がまだたくさんありますし、そうすれば僕はもっと他に時間を費やすことができるんです」
ショウ「ということを直接は伝えなかったのか?」
マモル「はい。自信を失っている状態で、そこまで要求するのは過剰すぎるかと」
ショウ「確かに、ひとりで事務をやっているのだから、負担はそれなりにあるだろう。各種書類の作成や電話対応、給与の計算もそうだし。備品の管理もあるからな」
マモル「しかし、傾聴重視で話をしていると、彼女は自分がもう少しレベルアップできればもっと会社に貢献できると、前向きな考えに変わっていったんです」
ショウ「ほう。自分の問題に気づいたということか」
マモル「そのために、彼女は研修に参加したいと希望しました」
ショウ「研修? 事務職の研修にか?」
マモル「はい。書類をファイリングすることや、PCのソフトをどう使いこなすのかという基本的な研修ではなく、より会社の貢献するための上級者向けの研修ですね」
ショウ「また人材育成にコストをかけることになるわけだ」
マモル「そうなりますね。ただ、彼女自身が考え、導き出した答えです。高いモチベーションで参加できるでしょうし、効果も期待できます。だから僕は彼女に投資することに決めました」
ショウ「うん。人材育成はコストではなく、投資という考え方には賛成だな。
このタイミングで木梨さんに投資するのは、まさに
『奇貨居くべし』だ」
マモル「何ですそれ?」
ショウ「秦の政治家で呂不韋氏という商人は、趙の国に人質となっていた秦の王子を、自分の資産を投じて救出し、それが縁となりやがて秦の宰相となった。上り詰めるためには、得難い好機は逃さずに利用して、先行投資する必要があるということだよ。救われた秦の王子は、後に秦の始皇帝の父親となる」
マモル「スケールの大きな話ですね。ただ、彼女の自己成長が、会社に明るい未来をもたらしてくれることに間違いはないでしょう。そのための先行投資です」