※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『競合相手との根競べ』です。
ショウ「その後どうだ、マモルの会社は挽回してきているのか?」
マモル「残念ながら売り上げは落ちていますね。第1四半期の収支はかなり厳しい結果になりそうです」
ショウ「令和のスタートからその状況はキツイな…… 顧問税理士は何て言ってるんだ?」
マモル「見通しは僕と同じですね。お盆頃までは我慢が続きそうだと」
ショウ「それで会社の経営は大丈夫なのか? まさか潰れるなんてことはないだろうか?」
マモル「先輩、縁起でもないことを言わないでくださいよ。顧客がみんなそろってあちらに移ったわけじゃないんですから」
ショウ「そうだな。スマン、スマン」
マモル「あちらはオープン記念価格で、かなりの低予算を提案しているようです。それが大きなメリットになっています。まあ、お客さんにとってみても、安いってことはそれだけでも魅力的ですからね」
ショウ「まだオープン記念価格でやってるのか…… まあ、それも今月いっぱいくらいの話だろ」
マモル「顧問税理士さんとも共通見解なんですが、おそらくしばらくは価格を維持してくると思います。それこそお盆まではこの記念キャンペーンを続けるんじゃないでしょうか」
ショウ「そこまで続けてくるのか。俺もどのくらいの価格でやっているのかは興味があって調べてみたが、あの価格じゃ、人件費だのを差し引いたらほとんど利益は残らないだろう」
マモル「利益どころか、きっと赤字経営でしょうね」
ショウ「最初はどれだけ顧客を囲えるかが勝負になるだろうが、赤字をいくら積み上げても損失が膨らむだけの話だからな…… あまり長い期間、そんな価格で経営していくのは難しいからそろそろ通常価格に切り替えるんじゃないのか」
マモル「そこを見越して資金を調達して起業したんだと思いますよ。少なくとも半年は赤字になることを覚悟しているのではないでしょうか」
ショウ「疲弊覚悟の長期戦か…… 厄介な相手だな」
マモル「確かに顧客は集められるでしょうが、ポイントはサービスの質です。疲弊してサービスの質が低下したら評判は下がりますからね。それはもちろん自分たちにも該当する話なんですが」
ショウ「気持ちを切らして、残ってくれた顧客へのサービスが低下したら終わりだな」
マモル「そこも相手の狙いでしょう。こうなったら根競べです。僕の会社は価格を下げずに、これまで通りできる限りの最高のサービスを提供していきます。差が広がるにしても、縮まるにしても、お盆までは根競べが続くと考えています」
ショウ「そうなると、マモルの会社の資金ぶりが心配だな」
マモル「なんとかします。ここは正念場ですからね。こちらのサービスの質の方が上であることを証明できれば、必ずお客さんは帰ってきますよ」
ショウ「リコー三愛グループの創始者である市村清氏の言葉を思い出したよ」
マモル「リコーは、複写機やデジタルカメラなどを製造しているメーカーですね」
ショウ「ああ日本を代表する経営者だよ。
『仕事はあきらめてはいけない。
最後のひと押しが、正否を決めるのだ。
人生は紙一重だ。
こちらが根負けしかかったとき、
相手はこちらに根負けしかかっているのだ』
と述べている」
マモル「隣の芝は青く見えますが、苦労しているのは同じということですね。こちらからあきらめることは絶対にしませんよ」
ショウ「そうすれば、あちらも根負けして価格を正常に戻さざるを得なくなるからな。そうなったときに、本当にサービスの質が高い方を顧客は選ぶことになるだろう」
マモル「選んでいただけるようなサービスを提供し続けるのみですね!」