※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「その後、二人の結婚の話は進展しているのか?」
マモル「ええ。どうやら順調のようです。先輩からアドバイスいただいた結婚前は両目を開き、結婚後は片目を閉じるという話をすると、二人とも苦笑いしていましたよ。結婚して一緒に生活していくようになれば、嫌でも相手の納得できない言動が見えてきますし、夫婦だからこそ意見がぶつかり合うこともあるでしょうからね。そこへの不安は少なからずあったようです」
ショウ「多少、お節介な話ではあると思ったけど」
マモル「いえいえ、その話を聞いて、勢いで結婚するのではなく、話し合うべき点は結婚前にすべきだし、理解を深めてからにしようという話し合いになったようです」
ショウ「そうか。ある程度、冷静に考える時間も必要だからな。しかし、不思議な話だ……」
マモル「そうですね。今までは顔を見ればすぐ口論になるような関係でしたからね。それが結婚とは、驚きですよ」
ショウ「ハハハハ。いや、俺が不思議に感じているのは、マモルの話だよ」
マモル「え? 僕のことですか?」
ショウ「以前のマモルは、他人のことなど我関せずというスタンスだったからな。プライベートの話に立ち入るどころか、仕事の話でも干渉するのを嫌がっていただろう。それが今や若い二人の結婚の相談に親身になっている。人は変わろうと思えば、変わるものだと思ってね」
マモル「確かにそうですね。先輩と一緒に働いていた若い頃は、極力他人に関わることを避けていました。元来、内向的な人間ですし」
ショウ「何がマモルをそこまで変えたのか、それが不思議になったのさ」
マモル「おそらく、あのまま一社員として働き続けていたら変わっていなかったでしょう。独立してバリバリ働いている先輩に憧れて、起業したのが大きな転機でしたね」
ショウ「そうだな。ただ、ひとりで経営している間はあまり大きな変化はなかっただろ」
マモル「やはり会社の規模を大きくして、従業員を雇うようになってからでしょうか。初めて経営者としての実感が湧いてきた気がします。経営者として、従業員に充実感のある仕事をしてもらいたい、もっとそれぞれの個性を活かしてほしいという気持ちが強くなりましたね」
ショウ「そのことで従業員は大きく成長したが、それ以上に成長したのは経営者の肩書きを持つマモル自身だろうな」
マモル「そうかもしれません。そうありたいと願って行動もしてきましたし」
ショウ「ノーベル文学賞を受賞したアイルランドの作家、ジョージ・バーナード・ショー氏の言葉を思い出したよ。
『肩書きは、中才を際立たせ、
大才の邪魔をし、
小才によって汚される』とね」
マモル「毒舌家らしい彼のコメントですね」
ショウ「毒舌家どうかは別にして、一理ある。そうだろ?」
マモル「…… 与えられた肩書きによって、僕はさらにパフォーマンスを発揮したいと思ったことは確かですね」
ショウ「少なくともマモルは経営者という肩書きを汚すようなことは何ひとつしてはいないよ。小才ではない証だな。中才は肩書きによって、より輝きを増す。大才はその束縛を邪魔に感じるようだが、それはよっぽどの天才の話だろう。俺はマモルのように肩書きがその人の人生に良い影響を及ぼすことがベストだと思うよ」
マモル「志を失えば、すぐに肩書きを汚すことになりますね。今後も目標を大切にしつつ、経営者としての使命をまっとうします。いずれは従業員にもそのようになってほしいですね」
ショウ「マモルのその意識と、行動があればそれも可能な話だろうな」