※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「いやー、すまんなこんな平日の夜に。仕事は終わったばかりだろ? どうしても上田の状況が気になってなー」
マモル「先輩、お疲れ様です。先輩が気にかけてくれていることは重々承知しています。お電話で上田さんの様子をお伝えするのもどうかと思っていたので、ちょうど良かったです」
ショウ「まあ、マモルの自宅での食事会で、上田がプロジェクトリーダーをやると自分から言ったことには驚いたが…… 実際のところはもう動いているのか?」
マモル「そうですね。動いているといえば、動いていますし、まだ動けていないといえば、動けていないです」
ショウ「なんだその中途半端な状態は? 一晩考えてやっぱり尻込みしているのか?」
マモル「本人のやる気はあります。会社でも僕の部屋で、二人で話をしていると、その気持ちは口先だけじゃないって伝わってきますからね。ただ、みんなの前に出ると途端に萎縮してしまうんです。なので、二人で話合った内容がなかなかみんなに伝わっていない状況が続いています」
ショウ「ハァ…… よくそんな悠長なことをしていられるな。マモルの会社だってどんどんクライアントから仕事を任せてもらわないと売り上げが苦しくなる一方だろう。新婚旅行に行きたい二人も、いつになっても決められないままだぞ」
マモル「やはり、自分のトラウマと向き合うということは簡単なことではないですね。強引にプロジェクトの開始をみんなに伝えて、そこで上田さんをリーダーにすることを発表しようとも考えたんですが、様子をうかがっていると、今の上田さんの雰囲気ではトラブルに発展することが予想されます」
ショウ「だから言ってるだろう。上田にはプロジェクトのリーダーは務まらない。無理強いするとメンタルが潰れてしまうぞ。とりあえず、できる限りの範囲の中で引き続きを受けて、無難な業務をこなしていくのが一番じゃないのか? マモルの育成したいという気持ちは俺としても嬉しいが、これ以上時間を費やして生産性がゼロの状況を続けていくわけにはいかないだろう」
マモル「先輩らしくないですね。現状を変えるためには行動あるのみじゃないんですか?」
ショウ「レンタル移籍で出向させている立場からだと、これ以上マモルの会社の足を引っ張ることはできないからな。補完的に新婚旅行に二人の分を働ければ充分だよ」
マモル「上田さんはこのままの状態でいいということですか?」
ショウ「マモルの会社にレンタル移籍して成長させようと考えたことが、むしがよすぎる話だったってことだな」
マモル「先輩は以前、慶應義塾大学創立者である福澤諭吉氏の言葉を用いて、行動に移すことの重要性を語ってくれました。世の中のものは、進歩しなければ必ず退歩し、退かないものは必ず進歩すると」
ショウ「ああ、福澤諭吉先生の
『進まざる者は必ず退き、
退かざる者は必ず進む』
という言葉のことか」
マモル「顧問税理士さんに上田さんのことを相談しても、同じような内容の答えが返ってきました。人の道は進むか、後退するしかないと。無難にやれることだけやっていたら上田さんは現状維持ではなく、後退します。先輩はそれがわかっていたから僕の会社にレンタル移籍させたのでは?」
ショウ「それはそうだが……」
マモル「上田さんとは相談のうえ、明日の午前の全体打ち合わせで、プロジェクトの発表とリーダーを務めてもらうことを発表します。大丈夫です。もちろん僕も全面的にバックアップしますから。新しいプロジェクトへのチャレンジは、僕の会社の進歩でもあるんです」