※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「話を聞いたぞ、体調を崩して入院してたんだって?たまたま買い物の最中にマモルの奥さんに会って、それを知ったんだ。大丈夫か?」
マモル「入院というほど大げさなものではありませんよ。半日ほど点滴を受けて回復しています」
ショウ「だって、救急車で深夜に運ばれたんだろ」
マモル「原因不明の腹痛がありまして、経験したことのない痛みだったんですよ。痛みに耐えられず、しかも動けなくなったんで、妻に救急車を呼んでもらいました。検査の結果も異常はなかったので、肉体的・精神的疲労が原因じゃないかというのが医者の判断です。点滴を受けたら嘘みたいに痛みはなくなりました。今はまったく問題ない状態です」
ショウ「そうか、異常がなくて良かったが、かなり無理が祟っているようだな。1日空けて会社では問題は起きなかったのか?」
マモル「突発的に僕が休んでしまったので、そのしわ寄せが他の従業員にあってドタバタだったようです。それでも望月さんはマイペースを崩さないので、杉山と口論になって、さらに事態が悪化しました」
ショウ「まさに弱り目に祟り目だな…… もう望月に固執する必要はないだろう。じゃないとマモルの会社がバラバラになってしまうし、マモルの体調も心配だ。戻すより他にないだろう。そもそも望月はマモルの会社の従業員じゃないんだからな」
マモル「先輩は望月さんを呼び戻してどうするんですか?」
ショウ「さすがに今回の件で愛想が尽きたよ。望月は別の環境で改めて自分を見つめ直すべきだな」
マモル「クビにする、ということですか……」
ショウ「まあ、そういうことだ。今回のレンタル移籍は望月にとってラストチャンスのようなものだったからな。当の本人はそう感じていなかっただろうが……。そのチャンスを活かすことができず、変わることができないのであれば仕方がない。苦渋の決断だが、これは俺の会社の話だから、マモルが気にすることはないぞ」
マモル「そうはいきませんよ。レンタル移籍でも、正規採用でも、望月さんは、今は僕の会社の従業員です。期待に応えられないからって見捨てるわけにはいきません」
ショウ「そうは言っても、現状は厳しいだろう。ネガティブな決断に思えるかもしれないが、経営者にとっては避けては通れない道だよ」
マモル「先輩は、僕が入社したてで立て続けに大きなミスを連発していたとき、ドン・キホーテの話をしてくれましたよね。覚えていますか?」
ショウ「ああ、スペインの作家、ミゲル・デ・セルバンテス氏の言葉だろう…… しかし、状況はあのときとはまったく違うぞ。はるかに困難だ」
マモル「僕にとってはあのときもはるかに困難な状態でした。しかもドン・キホーテでは、どんな困難でも、と記されています」
ショウ「確かにそうだな。彼は、
『どんなに困難であっても、
解決策は必ずある。
救われない運命というものはない。
災いにあわせて、
どこか一方の扉を開けて、
救いの道を残している』
と述べている。しかし、今回、そこまでポジティブな考え方ができるのか?」
マモル「先輩のその言葉のおかげで僕はあのときの困難を乗り越えることができました。ポジティブな考え方ができたからこそ、解決して成長し、今の僕があります。今回も同じですよ。あきらめてしまったら救いの道を見つけることはできないでしょう」
ショウ「うーん…… さすがに今回ばかりはなぁ…… もちろん、俺も思案を尽くしてみるが」