※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「最近はずいぶんと寒くなってきたが、また体調を崩したりしていないか?」
マモル「ご心配いただいて、ありがとうございます。大丈夫ですよ。しっかり食べて、しっかり寝ていますから」
ショウ「他の従業員はどうだ? 特に気になるのが望月だが」
マモル「思い切って新規のプロジェクトを任せました」
ショウ「それはまた…… ずいぶんと思い切ったな。橋本さんも入院中でいないんだろ? 望月のフォローをするのに余計な時間と労力が必要になって、杉山くんらにさらにしわ寄せがいくんじゃないのか?」
マモル「杉山とはよく話し合いました。どうすれば望月さんがパフォーマンスを発揮させられるのかということをです。新規のプロジェクトを任せるべきだと提案したのも杉山です。そのフォローを自分がするとも言ってくれました」
ショウ「本当か? あの杉山くんが? 望月の姿勢にかなり反発していたはずだろう。口論も絶えないと聞いたぞ。マモルはいったいどんな魔法を使ったんだ?」
マモル「魔法というか、杉山には、経営者になったつもりで考えて欲しいという話をしました。この視点は今までの杉山にはなかったものでしたから、新鮮味もあっていい刺激になったようですね。杉山も望月さんのポテンシャルの高さは認めているようで、こうしたらいいんじゃないか、こう接したらいいんじゃないかといろいろな意見が出てきましたよ。僕にはないアイディアもあって驚きましたね。普通に感心したんで、杉山には成功できる経営者になる素質があるなと感想を述べたら、さらにやる気になっています」
ショウ「なるほど。それはまた心強い協力者の登場だな。杉山くんの自律性をうまく引き出すことができたわけか。しかし、いくら杉山くんがやる気になっても、プロジェクトを担当する望月にその気がないんじゃどうにもならないだろう」
マモル「ええ。その通りです。ただ、杉山とのやりとりで大事なことを思い出しました」
ショウ「大事なこと? 相手を褒めるということか?」
マモル「それもあるかもしれませんが、それを含めて、もっと相手をリスペクトして話をすべきではないかということです。自分が経営者だからという立ち位置や、相手が従業員だからという見方を一度捨てて相手に接する必要があるんじゃないかと気づいたんです。以前に先輩がお話されていましたよね。どうすれば敵対者を友人にできるのかというテーマでした。アメリカの教育者の話だったはずですが……」
ショウ「ああ、デール・カーネギー氏の話か。あれはたしか、マモルが新人の頃で同期入社との人間関係に悩んでいたときのことだな」
マモル「そうです。あのときに重要な気づきを得たはずなのに、そのことをすっかり忘れてしまっていました。先輩、申し訳ありませんが、改めてデール・カーネギー氏の言葉を聞かせていただけませんか」
ショウ「わかった。彼はこう述べている。
『相手を重要人物として扱い、
誠意を持って協力を要請すれば、
敵対者もまた友人にすることができる』
とね。この話をした後、マモルと同期の関係は良好になっていったな。一緒にプロジェクトを担当して成果も出していた」
マモル「そこがポイントです。杉山に対したときのように望月さんに対することができれば、状況は大きく変わるはずなんです。これは僕ひとりだけではなく、杉山もそう望月さんに接していけば効果はさらに高まります。実際にそう提案してみると杉山も大きくうなずいていました。ですから現在の職場のムードは望月さんや上田さんが来てから、最も雰囲気の良い状態になっています」
ショウ「そうか。それは期待できそうだな」