※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「ひとまずは軌道に乗って良かったよ。一時はどうなることかとハラハラドキドキしていたからな」
マモル「ご心配をおかけしました。やはり先輩が推薦された人物に間違いはありませんね。売り上げもV字回復で、ふたりがレンタル移籍で来る前以上になっています。成果を出すために一番重要なのは、改めて人だなと感じました」
ショウ「知識や経験がいくらあっても自分自身の問題と向き合い、それを乗り越えようとする勇気やチャレンジ精神がなければ、激動する時代の変化には対応できないからな。トップダウンの企業じゃ生産性はあっても、現場の変化に柔軟に対応する創造性に欠ける。これからの時代は従業員ひとりひとりがリーダーとしての自覚をもって、目標を達成するために能動的に考え動ける企業でなければ生き残っていけないだろう。そういった人材を育成することにとことんこだわっているマモルのマネジメントの成果だよ」
マモル「そのための試練を先輩が与えてくれたと思っています。僕にとっても、会社にとっても、そしてふたりにとってもとても良い機会になりました。ありがとうございます」
ショウ「そうやってポジティブに受け止めてくれるところがマモルらしいな。俺もマモルには、ふたりに大事なことを気づかせてくれて感謝しているよ。見違えるほどの成長ぶりだ」
マモル「一日も早く先輩の会社に戻ってほしいんじゃないですか?」
ショウ「都合のいい話しだが、そうだな。しかし、今回のレンタル移籍の目的は、マモルの会社の杉山くんと木梨さんの新婚旅行の穴を埋めるためだから、目的を果たしていない以上は引き続きマモルの会社で頑張ってもらうしかないよ」
マモル「だとすると杉山と木梨さんには新婚旅行を我慢してもらうしかないですね……」
ショウ「本気で言っているのか?」
マモル「冗談ですよ。実は新婚旅行の日程も決まっているんです。上田さんと望月さんの活躍を確認して、これならしばらく留守にしても大丈夫だと判断したようですね」
ショウ「おお、そうなのか。それは良かった。で、どこに行くんだ?」
マモル「場所は初めから決まっていたようですね。インドです」
ショウ「インド? 最近の経済成長ぶりは中国に匹敵するからな。将来を見据えての選択か」
マモル「それはあまり関係ないようですね。もともと天竺に行ってみたいという純粋な思いのようです」
ショウ「天竺…… なんだか西遊記のような話だ」
マモル「日本でも昔からユートピアを夢見て、天竺を目指して旅に出る人もいたようです」
ショウ「ユートピアねー。そこに行けば幸せになれるということか?」
マモル「さすがにふたりともそうは思ってはいないでしょう。でも何か新しい視点を得ることができるんじゃないかとは考えているようです。幸せとは何なのか考えるきっかけになるんじゃないかと」
ショウ「ほう。向上心の強いふたりだな。その話しを聞いて、ロックミュージシャンの甲本ヒロト氏の言葉を思い出したよ」
マモル「ブルハですか。今でもよく聴きますよ」
ショウ「彼はこう述べている。
『幸せを手に入れるんじゃない。
幸せを感じる心を手に入れるんじゃ』
ってね。インドを新婚旅行に選んだふたりも同じ思いかもしれないな」
マモル「そっか、幸せを求めるんじゃなくて、幸せを感じる心を追い求めるべきなのか。それって仕事でもプライベートでも重要な視点ですね」
ショウ「で、いつ行くんだ?」
マモル「インドでは乾期が快適ですから、2月から3月にかけてですね。40日間は滞在する予定です」