※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「先輩、今日はお忙しいところ、お時間を割いていただき、ありがとうございます」
ショウ「いや、問題ないよ。美味しい創作料理の店ができたと聞いて、俺もここには一度来てみたいとは思っていたところさ。いったいどうした?」
マモル「実は会社の従業員の件でご相談が……」
ショウ「うん? 前回の話だと、経営者であるマモルの志を従業員たちも共有できていて、かなりチームワークも向上したはずだったよな」
マモル「はい。僕としてもとても手ごたえを感じています。競合相手の登場で一時は動揺しましたが、今はむしろ以前よりも良い雰囲気でみんな働くことができていますね」
ショウ「一見するとまったく悩むような点はなさそうだが…… やはり売り上げや人件費の問題か?」
マモル「それも顧問税理士さんと常に話をしていて、なんとかやり繰りはできています。ここを耐えきれば希望も見えてくるという見解です」
ショウ「そうか、それは良かった。じゃあ、いったい何の相談なんだ?」
マモル「杉山と木梨さんについてなんでが……」
ショウ「おお、以前はよく衝突していたふたりだな。マモルもいろいろ苦心して対応し、その後はどちらも成長して、関係は良くなったはずだろ」
マモル「見違えるほど良くなっていますね」
ショウ「…… よくわからんな。だったら何も悩むことはないだろう。それも職場の雰囲気を盛り上げている要因のひとつだろ。それが何の支障になるんだ?」
マモル「それが…… 僕も急な話で驚いているんですが、凄く関係が良くなって、結婚すると」
ショウ「結婚!!? その、杉山くんと木梨さんとが?」
マモル「そうですね。僕も従業員のプライベートまではあまり踏み込むつもりがなかったので、気にしてはいなかったんですが、退社後もよくふたりで会っていたようで…… それでお付き合いをするようになったという話です」
ショウ「まあ、この間のゴルフで会った時も、俺的には杉山くんは好印象だったが…… しかし、ずいぶんな急展開だな。あれだけいがみ合っていたふたりだろ。性格も正反対のような気がしていたが」
マモル「性格や価値観が真逆だったのが、新鮮だったようです。互いに成長できて、自分とは別の価値観にも理解を示せるようになったということでしょう」
ショウ「新鮮ねー。まあ、刺激を受けて燃え上がる恋愛もあるからなー」
マモル「もちろんふたりのプライベートの話ですので、口出しするつもりはないのですが…… 価値観が異なり過ぎていて、長く一緒に過ごすようになって大丈夫かなと、少し心配になりまして」
ショウ「職場と家庭ではまったく別世界だからな。職場ではうまくいっても、家庭では大きなストレスになる可能性もある。だからといって止めるわけにもいかないだろ」
マモル「ええ、止める気はないんですが、何かアドバイスはしておいた方がいいかなと」
ショウ「マモルの家に呼んで、理想の夫婦像を見せてやったらどうだ?」
マモル「いえ、あの、理想的な夫婦ではないと思います。かといって大きな衝突もありませんけど。互いに理解し合いながらなんとかここまで来たという感じですね」
ショウ「そうか。じゃあ、ひとつ俺からアドバイスするとしたら、イギリスの神学者のトーマス・フラー氏の言葉をメタファーとして用いるよ」
マモル「メタファー、イメージさせやすい例え話のようなものですね」
ショウ「彼は結婚についてこう述べている。
『結婚する前には、
両目を大きく開いてみよ。
結婚してからは、
片目を閉じよ』とね」
マモル「さすが先輩。ずばりのアドバイスです。ありがとうございます!」