※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『議論と口論の違い』になります。
マモル「お忙しいところをすみません、先輩」
ショウ「いや、問題ないよ。ちょうどこの近くの社長さんと打ち合わせをする予定だったからな。昼食をどうしようか考えていたところだったんだ。それより、聞いた話じゃ、マモルの会社の従業員たちはずいぶんやる気になっているらしいな」
マモル「え、ええ」
ショウ「これもマモルが経営者として地道に従業員の話を聴いて、やる気スイッチを押してきた結果か。マモルにはぜひ、うちの会社の従業員にもかかわってもらいたいほしいよ」
マモル「そうですか……」
ショウ「なんだよ、また浮かない表情だな、何かあったのか?」
マモル「事務員の研修に参加するようになって木梨さんはとてもやる気を見せてくれています。ポジティブになった営業の橋本さんに刺激を受けて、杉山もやる気になっているんですが…… どうも木梨さんと杉山が、かみ合っていないようなんです」
ショウ「かみ合っていない?」
マモル「杉山も会社の認知度を上げるためにどういったマーケティングが必要なのか、真剣に考えてくれていますし、実際に提案もしてくれています。木梨さんも同じように会社の発展を考えて、事務員の立場から杉山に対してフィードバックしてくれるようになったんです。すると意見の衝突が多くなってしまったんです」
ショウ「まあ、木梨さんも今まではそうなることを怖れて何も言っていなかったんだろうな。勇気をもって発言できるようになったことは、間違いなく木梨さんの成長だろう」
マモル「それは、そうなんですが、意見の衝突がどんどんエスカレートしてきて、互いの悪口の言い合いみたいになっているんですよ。杉山に対して時間にルーズなのが社会人として信じられないとか、木梨さんに対しては、愛想のない顔見るたびに疲れが増すとか……」
ショウ「なんだか子供同士のケンカみたいだな」
マモル「先輩、笑い事じゃないんです。ほぼ毎日そんな感じなんですよ。二人ともIT業界出身ですから、当初はその分野で建設的な意見を言い合っていたんですが、最近はほとんど誹謗中傷みたいになってしまっています」
ショウ「それは問題だな。論点がすり替わってしまったのか。互いに痛いところを突かれて感情的になってしまっているのかもしれないな」
マモル「なにせ従業員も3人だけですからね。嫌でも毎日顔を合わせることになりますし、話もするんです。それで、口を開けば罵りあいですから、困ったものです」
ショウ「マモルは経営者として、どんな対応をしているんだ?」
マモル「喧嘩両成敗のような形になっていますね。とりあえずしばらくは互いにコミュニケーションはとらない方がいいかと。僕と橋本さんが上手く架け橋になっていく方向です」
ショウ「何かをしようとアクションを起こせば、反対意見もあるだろうし、もっとこうした方がいいという指摘もあるだろう。それに対して頭に血がのぼって感情的になっていたんじゃ、せっかくのやる気も空回りだな」
マモル「そうですね。僕がもう少し上手にマネジメントできればいいんですが」
ショウ「アメリカの作家でコメディアンのロバート・クィレン氏は、
『議論は知識の交換であり、口論は無知の交換である』
と述べている。二人には専門の知識もあるし、どうすれば会社が発展するかもわかっている。二人の口論を議論へと舵取りしていくことが、マモルや橋本さんの役割かもしれないぞ」
マモル「そうか…… 互いにもっと冷静になって話ができるように働きかけていくべきなのか」