※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「店でもようやくこの時間帯までアルコールが飲めるようになったな。以前の日常が戻ってくるというのは嬉しいことだよ」
マモル「そうですね。復興しているのを肌で感じます。しかし、こうして先輩との間に透明なアクリル板が備え付けられているのを見ると、やはり日常様式は変わったんだということもまた実感します」
ショウ「まあ、これも確かに最初は違和感があったが、慣れてくると別に気にもならなくなってきたぞ。今後はこういった形式が当たり前になってくるんだろう。この時期に生れた子どもたちが物心ついた頃には、こういった感染被害を防ぐ設備のない店に対して逆に違和感を覚えるのかもしれないな」
マモル「この2020年を境に世界は激変したんですね。これはきっと歴史の教科書に登場するほどの出来事でしょう。ここから先は新しい未来ですか」
ショウ「いつの時代にもそういう転機はあるもんだよ。敏感に気づき、反応できる人もいれば、鈍感で後々になって初めてその違いに気づく人もいる。これだけ情報が溢れかえった世界では、自分が敏感だと勘違いしている人も大勢いるだろう。本当に敏感な人はもうどんどん行動に移しているよ」
マモル「僕の会社もようやくメンバーが揃って出社する態勢になりましたが、対応に四苦八苦です。クライアントからは新しいマーケティングや、新しい組織作りについてどんどんアドバイスを求められている状態ですが、なかなかうまい提案ができずに苦労しています。クライアントも状況が状況なだけに焦っていて、迅速な対応ができないのなら他のコンサルタントにお願いすると離れていってしまうケースもあるんです」
ショウ「斬新で、新しい手法でなければこの危機的状況は乗り越えられないと思っているんだろう。しかし、そうそう新しいものがポンポンでてくるわけでもないんだがな。しかし、俺の会社のクライアントも同じ現象だ。求めるものは皆一緒か」
マモル「アイディア不足や人手不足を考慮して、やはり新人の募集を続けることにしました。若者ならではの価値観や考え方が打開するヒントになるかもしれませんから」
ショウ「ああ、以前に人事の面談などをアウトソーサーに依頼していた件か? 来年度の募集は取りやめる企業も多い中で、思い切った決断だな。しかし、若者だから新しいものを創造する能力に長けているとは限らんぞ。創造というのは未来だけを見つめればいいというものではないからな」
マモル「では創造する能力とはどのようなもの何でしょうか?」
ショウ「そうだな。明治・大正という激動の時代で創造する能力を発揮した与謝野晶子氏は、こう述べている。
『創造は過去と現在とを材料としながら、
新しい未来を発明する能力です』
とね。過去の経験や事例、現在を的確に分析すること、それがあってこそ本当に必要とされる未来は作られるんじゃないのか」
マモル「過去と現在が材料ですか…… そう考えると、新しいもの、新しいものと焦ってどんどん飛びついていくのも問題ですね。どんな未来を築いていきたいのか、過去と現在をじっくりと見つめながら検討していかなければならないのかもしれませんね」
ショウ「この新しい世界で、新しい様式や新しいビジネスが根付いていくとしたら、そういった点まで取り入れたものになるだろう。従業員たちの叡智とこれまでの経験を今こそ結集させて、新しいチャレンジを生み出していくのがいいだろうな。新人に過度に期待するのはリスクが大きすぎるかもしれないぞ」