【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
起業したい。
でもそのノウハウはまったくない。
こんなことで起業して成功できるのだろうか?
という以前に、そもそも起業できるのだろうか?
私は、起業すると決意した日にネットで該当しそうな書籍を購入。職安に通っていた時間や、仕事を探していた時間をすべて、読書と、起業というキーワード検索でググる時間に費やすことになった。
しかし、読めば読むほど疑問は増えていき、わからない専門用語も増えていく。私の中で起業というハードルが日増しにどんどん高くなっていくだけだった。
「これは諦めるべきだろうか……」
そう自問自答する機会も増えてきて、ネガティブな発想ばかり。
たまには起業についてのことも、働くことも忘れて、他のことに没頭してみれば心に余裕ができるかもしれない。
「漫画喫茶でも行ってみようか」
これは気分転換しないともたないと感じた私は、以前よく利用していた漫画喫茶へ向かった。
「おお、どうしとった? お前さんの顔を見るのはずいぶんと久しぶりじゃな」
店に入ると、お茶を飲みながら漫画を読んでいる老人が声をかけてきた。この店の常連客で、歴史漫画好きの天海さんだ。私も歴史漫画好きで、キングダムや蒼天航路、センゴク、バカボンド、アサギロなどなど、この店でいろいろな歴史漫画を読んでいて、自然と天海さんと友だちになった。とはいっても歴史についての話が盛り上がるだけで、それ以外のプライベートはよくわからない。
「いやー、会社を辞めまして、いろいろあってなかなかここにはこられませんでした」
「ホッホッホ。そうか、そうか。まあ、若いころはいろいろあるわな」
若いといっても天海さんと比較しての話で、実際もう40歳だ。自分は若者のカテゴリーにはもう入っていない。
「仕事先は見つかったのかい?」
「退職して半年以上も経ちますが、まだなんです。もう探すことにも疲れちゃって、いっそのこと起業しようかなって」
「ほう。ついにはじめさんも旗揚げか」
「とは言ったものの、何をしていいのか、何から始めていいのかよくわからなくて…… とりあえず気分転換に来ました」
「天下を治めた家康公も、桶狭間の戦いで今川義元が織田信長に討たれるまでは、今川家の家臣じゃったからな。あの戦いがなければ家康公は独立できていなかっただろうし、江戸幕府が誕生することもなかっただろう」
いつのまにか、また歴史談義になっている。まあこれはこれで気分転換にはなるからいいだろう。
「独立するって、決意があれば簡単にできるのかと思っていましたが、とてつもなくたいへんなことなんだと実感しています。昔であっても、現代であっても、独立したということだけで凄いことだと尊敬しますね」
「歴代の起業家の中で、自動車王として有名なヘンリー・フォード氏は、
『事実がたとえわかっていなくとも、
とにかく前進することだ。
前進し、行動している間に、
事実はわかってくるものだ』
と言っておったぞ。まずは前進じゃ」
「とにかく前進することだと言われても、その前進の仕方がわからないんで、前進しようがないんですよ」
「そりゃあ、ひとりで悩んどるからとてつもなくたいへんに見えるだけじゃろ。困ったときは、ひとりで悩んでいても考えが堂々巡りになってしまうからな。
そういうときは、他人を頼ることじゃ。
専門家に相談するんじゃよ」
「相談か」