【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
夏期講習会で指導する学生アルバイト講師不足の問題を解消するため、顧問税理士の天海さんのアドバイスを参考に在籍している学生アルバイト講師の口コミを有効活用することにした。夏期講習会は目前。とにかく素人ではなく、指導経験のある人材を求めている。
ふたりの学生アルバイト講師が、SNSを通じて友達や先輩・後輩に声をかけてくれたので、この短期間でなんと6人もの応募があった。その中で4人は塾の非常勤講師や家庭教師の経験がある。しかも1人は実際に大手の進学塾で講師を勤めており、現状の待遇に不満があって、移ってきたいとの要望だった。これは確実に即戦力として期待できる!
まさか、酒井と石川のふたりにここまでの影響力があるとは思っていなかったので、驚きの反響だ。生徒から慕われている講師は、他の場所でも周囲に良い影響をあたえているということだろう。返す返す、このふたりを採用したことは私の学習塾に大きなプラスとなっている。
反響についてはすぐに天海さんに電話で伝えた。
「ほう、それは吉報じゃの。早速面接をして、研修という流れにすれば夏期講習会には間に合うのではないか」
「ええ。特に4人は2年間の指導歴がありますから、研修も短期間でいけそうです。冬期講習会のことを考えると、初めて挑戦する2人も採用して、まずは慣れてもらうつもりです」
「ということは、2学期以降の学生アルバイトの数を増やすということじゃな」
「入会も増えれば、人手はやはり必要になりますからね。特に私の学習塾は中学3年生の割合が大きいですから、2学期は受験勉強でかなり忙しくなります。ある程度、人件費が増える分には仕方ないですね。その分、有料のゼミなども企画していく予定です」
「現在働いている学生アルバイトのふたりとの大きな違いは、経験があるかないかという点じゃ。これまでのふたりは経験がないので、はじめさんの色に染めやすかったじゃろうが、
経験者は指導方法や考え方が
根付いておるかもしれぬ。
講師によって
サービスの内容に大きな差があるのは
問題になるから注意すべきじゃな」
「言われてみると確かにそうですね・・・・・・ 講師全員が最低限の共通認識を持って指導したり、面接したりする必要があります。わかりやすく徹底するにはどういった方法が効果的なのでしょうか?」
「組織に共通認識が欠けており、
ミッションやビジョンが
個々でバラバラになっている企業には、
企業理念がなかったり、
あっても浸透していなかったりするの」
「企業理念、そう言えば以前勤めていた学習塾にもありました。経営理念とは違うんですか?」
「経営理念は経営していくうえでの目標や、そのための手段じゃの。企業理念は、信念じゃ。その企業が何をしたいのか、社会にどう貢献していきたいのか、存在意義ともいえる。社員全員が共有するスピリットじゃな。じゃから、マインドアイデンティティ(MI)とも呼ばれておるの」
「例えばどのようなものがあるのでしょうか?」
「株式会社セブン-イレブン・ジャパンであれば、
『私たちはいかなる時代にも
お店と共にあまねく地域社会の
利便性を追求し続け、
毎日の豊かな暮らしを実現する』
と定めておるし、株式会社ソリューションであれば、
『日本中の企業を元気に!
~私たちは、人と組織の成長支援を通して、
持続可能な社会の実現を追求します~』
じゃの」
「企業理念を改めて見直して、新しい学生アルバイト講師とも共有していきます」