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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか82 人に厳しいルールを課して実践させるためのコツ」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 自分にも厳しく 

 

 

その日の夕方、私は石川と共にオンライン面接を行った。相手は都内のトップクラスを誇る中高一貫校受験生とその母親である。石川は事前に一度面接や体験レッスンを行っており、その詳細を聞いて約束事などしっかりと準備した上での二度目の面接となっていた。

 

まずは、現在の偏差値と、志望校の偏差値に大きな差があることを確認。この点は母子共に認識していた。しかし本人が強く望んでいるのだと母親は言う。画面に映っている生徒はあまり落ち着きがなく、本人が強く望んでいるのか、両親が強く望んでいるのか疑問。志望動機について本人に質問してみたが、いまいち具体性に欠ける内容で、どうしてもその学校に行きたいという思いは伝わってこなかった。

 

 

次に入塾を許可する条件として以下のルールを守れるのかどうかを確認してみた。

 

  • 1⃣ 週6日、各4科目で4時間のオンラインレッスンを受けること。
  • 2⃣ 与えられた宿題は必ず取り組むこと。
  • 3⃣ 2ヶ月後の模試で偏差値60に届かない場合は志望校を変更すること。
  • 4⃣ 途中で辞めないこと。

 

特にこの家庭は自分たちのニーズを優先して、合っていないと判断するとすぐに他塾に移りたがる癖がある。そんなことをしていると指導内容がバラバラで余計合格から遠ざかってしまうので釘を刺しておく必要があった。ただ、約束したからと言っても、2ヶ月経過して偏差値がまったく上がっていなかったら、約束を反故して辞める可能性は十分あるだろうが。

 

宿題を取り組むのは当たり前の話。現状の必要最低量は通常の1.5倍。わからない問題が多いので時間がかなりかかることが予想されたので、効率良く宿題を進めていくための方法についても話をした。

 

大きな問題は2つ。ひとつはこのレッスンカリキュラムだ。1週間で24コマの授業を受けることになり、1ヶ月でおよそ120コマ。月謝およそ60万円という高額費用になる。費用面は事前面談で確認しているので問題なさそうだが、学校から帰宅後4時間のレッスンをほぼ毎日受けることになり、その後で宿題に取り組むとトータルで7時間以上かかる計算だ。はたしてここまで過酷なスケジュールに耐えてついてこられるのかどうか、これが大きな問題であった。

 

この話を聞いても、本人はやれると即答。今までの家庭学習の時間がおよそ1時間30分だか大きな違いがある。それにも係わらず即答なので、かなり安易に考えているように感じた。

 

そして一番の問題は、現在50近辺を上下している偏差値を2ヶ月間で60まで伸びなかった場合、志望校変更を検討してもらうという点だ。これだけは母子共に即答できず、悩んでいた。しかし、それを認めないと入塾はさせられないという強固な姿勢を見せることで、最終的には渋々納得。

 

レッスンの担当はほぼすべて石川となる。それは母子の希望でもあった。よほど気に入られたのだろう。ただし、週2回、私が算数を担当して状況を確認することにした。そうすればタイムリーに状況の問題点を改善できる。

 

オンライン面接終了後、私は顧問税理士の天海さんから受けた言葉を、そのまま石川に伝えた。それは徳川家康が尊敬してやまなかった甲斐の戦国大名・武田信玄の言葉である。

 

 

いくら厳しい規則を作って

 

家臣に強制しても

 

大将がわがままな振る舞いをしていたのでは

 

規則などあってなきが如しである。

 

人に規則を守らせるには、

 

まず自身の言動を反省し、

 

非があれば直ちに改める姿勢を

 

強くもたねばならない

 

今後、私と石川が肝に銘じなければいけない言葉だった。

 

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