コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか81 部下が無理難題にチャレンジしたいと言ってきたときの対応」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 最後まで話は聴くこと 

 

 

2022年もついに10月に突入。早いもので今年もあと3ヶ月あまり。毎年のことだが、この時期から春までが塾業界にとっての正念場となる。受験は早い地域だと1月から始まり、その入れ替わりとして新入会生を募っていく。受験生の強化を図りながら、一方で塾生数アップのための戦略も必要になるのだ。

 

 

今回、顧問税理士の天海さんの事務所を訪れた理由は、新しいマーケット開拓を行った際に問題点が浮上してきたためである。志望校合格ラインまでは到底及ばない実力の家庭が、費用がどれだけかかってもとにかく第一志望校に合格させてほしいと入塾を要望してきた。

 

「残りの期間、どれだけ頑張っても合格には届かぬのか?」

 

「ええ、さすがに現状の学力では無理です。面接を担当した石川の話を聞くと、基本の単元からやり直しをしなければいけないところも数多くあるそうです。理科や社会であれば暗記することでそこそこ攻略できたとしても、算数や国語は相当な応用力を磨かないと厳しいです。小数どうしのかけ割り算から計算ミスが多いのでは論外ですよ」

 

「受け入れたとしても、断るにしても、後々のトラブルを避けるためにはしっかりと説明しておく必要があるじゃろうな。そうなると学生アルバイト講師だけの面接では不十分。塾長であるはじめさんも交えた話し合いが必要になるのではないか」

 

「はい。そのつもりです。ただ、石川の話を聞いていると気になる点がいくつかありました。まず、塾や家庭教師を転々としているとしていることです。学力が伸びないのは自分の努力よりも、指導者に問題があると考えていると思います。過去にもこういった生徒を受け持ってきましたが、なかなか伸びません。そして改善すべき点をアドバイスすると、そのほとんどが自分には合っていないと退塾していくんです。保護者の方も同じ考え方をしているので取り組み方を改善させることは難しいですね。しかも石川がオンラインで学習面談しているときも、急に立ち上がって画面から消えることもしばしばあったとか・・・・・・。売上だけのことを考えれば入塾を許可したい気持ちもありますが、責任指導という観点からすると到底受け入れられない生徒です。にも係わらず、石川は入塾OKの方向で話を進めてしまっています。この対応にはさすがに腹立たしさを感じて、石川を思わず叱りつけてしまいました」

 

「彼女なりに何とかしてあげたいという思いにかられてのことじゃろうな」

 

「他にもいろいろ報告したかったようですが、私が強く叱ってしまったために、話はそこで終わっています。とりあえず石川自身が授業をすべて対応すると最後に言ってきました。そういう問題ではないですよね。彼女は受験指導をかなりあまく考えていますよ」

 

「まあまあ、そこまで感情的にならずともいいではないか。指導については経験が浅いが、親身に対応することで生徒からの信頼も厚いと聞いておる。何かしらの対策を思いついているのかもしれぬぞ」

 

「懇願されて断り切れなかっただけなような気がしますが・・・・・・」

 

 

家康公がこう言っておる。

 

愚かなことを言う者があっても、

 

最後まで話を聴いてやらねばならない。

 

でなければ、

 

聴くに値することを言う者までもが

 

発言しなくなる

 

とな。まずはその学生アルバイト講師の考えや話した内容を、改めてじっくり聴いてみることじゃ。そして、入塾許可のための条件やルールをしっかりと相手に伝えていくよう、はじめさんを交えて話し合いを行ってみなさい」

 

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