【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
5月からの入塾生を5名も迎えることができ、勢いが出てきたところだが、不安要素もある。
学生アルバイト講師の多くが就職活動などで忙しく、なかなかシフトが組めなくなってきている点だ。
柱の石川はほぼ毎日のように働いてくれるので大いに助かっているが、後は石川と同期の酒井ぐらいで、私を含め2人か3人での生徒対応がGW明けから続いている。
慢性的な人手不足だ。
コロナ禍も沈静化し、本格的に動き始めた飲食店などで労働者の取り合いになっている。
単純に時給が高ければ人が集まる時代ではない。
最近では
SDGs(Sustainable Development Goals
:持続可能な開発目標)
について企業がどう対応しているのかも、
労働者が働く場所を選ぶ重要な要素
になってきた。
この場合、脱炭素社会実現に向けた取り組みというよりも、SDGsの8番目のゴールにあたる働きがいのある労働環境改善について注目が集まる。
賃金アップ、残業の削減、有給取得、安全安心に働ける環境、そういった項目に積極的に取り組んでいる企業が評価され、人も集まりやすくなるのが現代のブームだ。
環境・社会・ガバナンスを意味するESG評価は、金融機関が投資先を決める際の大切な指標になっており、
企業がESG評価を高めて
社会的な信頼を高めるためには
積極的にSDGsに貢献する取り組みを行い、
それを大々的にアピールする必要がある。
ESGのEはEnvironment:環境で、地球温暖化をこれ以上悪化させないようCO₂排出量を削減したり、再生可能エネルギーを利用していくという環境保護の取り組みだ。
猛暑が続くことが多くなり、昨年はクーラーをフル活動していたが、同じことを繰り返すと電気代が高騰している今年は経営がより苦しくなる。
省エネ活動を推進することで、EGS評価は高まるし、省エネによって光熱費も軽減できるからまさに一石二鳥だ。
再生可能エネルギーを利用するような最新設備を導入するような環境ではないから、できることはやはりエネルギー消費量をいかに抑えるかという点である。
かといって暑い中でも勉強を頑張れと生徒や学生アルバイト講師に強制したら、まさにESGのS、Society:社会の項目で大いに減点となる。
適正な労働環境を整備できていないためだ。
人手不足を解消するどころか今いる学生アルバイト講師も辞めていくし、そんな中で勉強したがる生徒もいないだろうから退塾も増えてしまう。
そうなるとできることは何だろうか?
私は顧問税理士の天海さんとの電話の中で、それとなく尋ねてみた。
「本格的な夏を迎える前に
省エネリフォームするのが最適じゃろう」
「リフォームですか? 起業してまだ3年、さすがにリフォームは早すぎませんか? その資金もありませんし」
「省エネリフォームには、教室を大々的に改修する以外にも簡単にできる手はあるぞ。例えばはじめさんの教室の西日が室温上昇にかなり大きな影響を与えておる。その方向にあるドアや外壁の遮熱塗装を施し、窓も断熱工事するとそれだけでも効果はあるじゃろう」
「塗装でそんなに効果があるんですか?」
「起業した際に以前のドアをそのまま使うことにしたじゃろう、3年経過した今、塗装が一部劣化して遮熱機能が低下しておる。窓も内窓にしてより遮熱生の高いLow-E複層ガラスを入れて二重にするのも効果的じゃ。室温上昇を軽減できれば、クーラーをフル活動せず、適温設定で快適に勉強ができる可能性は高まるぞ」