コラム



税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』  「起業って何から始めればいいのか 169 競合との競争で重要なのは●●を守る」

 

今回のポイント
 競合との違いを明確にする 

 

 

1学期期末テスト目前のタイミングで大きな事件が起きた。

 

私の学習塾の近くに最近できた個別指導の学習塾が閉鎖となったのだ。

無料の講習会を開催するなど、こちらとは異なるサービスを提供して生徒を募集していたが、どうやらうまくいかなかったらしい。

一方でこちらは中高一貫の中学受験の実績、高校受験の実績が高い評判となり、塾生数が伸びた。

塾に通う母体数は毎年ほぼ一定なので、こちらが増えたということはおのずと向こうは減ったことになる。

塾生数の伸び悩みから先行きが不透明になり経営を断念したと予想される。

 

しかし、問題はそこではなく、閉鎖となった後だ。

 

他県の大手進学塾がここに進出。

もともとの塾生をそのまま受け入れ、新たな市場展開することになった。

しかも3階建ての建物を新築しての新規開講で、本気度がうかがえる。

 

 

以前から近くに何か新しい建物を建造しているのは知っていたが、それがまったく別の学習塾だとは気づかなかった。

 

気づいたのはチラシが折り込まれてからだ。

その内容を見て私はギョッとした。

 

進出してきた進学塾とは、つい先日交流会を行った他県の大手進学塾「清洲予備校」だったからである。

 

もちろんその際にはこちらに進出してくる話など一切なかった。

互いに指導力を磨いていきましょうと手を取り合って別れたばかりだ。

まさに青天の霹靂。

急いで相手方のWebサイトを確認すると、今まで掲載されていなかった新規開校の記事が目に飛び込んできた。

 

実はこの衝撃のニュースは、私以上に学生アルバイト講師たちに大きな影響を与えて、さらに大事件に発展していくことになる。

私が講師たちの大きな変化に気づくのは後の話だ。

 

とにかくまずは顧問税理士の天海さんに相談しようと慌てて電話をかけた。

 

天海さんも私と同じく折り込まれたチラシでこの情報を知ったようだ。

 

「交流会を持ちかけられたのが、まさか新規開校の布石だったとは夢にも思いませんでした」

 

「進出を口にせずに交流会をもちかけるとは礼儀に反する行為じゃの。まるでだまし討ちじゃ」

 

「チラシやWebサイトの内容を見る限り、この新規開校にはかなり力を入れていますね。1階は自習室完備、2階、3階も個別指導の教室が多く、小学生から高校生までターゲットにした大規模校ですよ」

 

「おそらくここを足がかりにこちらの県に市場拡大していく腹づもりなのじゃろう。そうなると最初でコケるわけにはいかん。夏期講習会は特別無料開催、しかも今なら期末テスト対策無料招待か」

 

「私たちも夏期講習会申込生には期末対策に一部無料で参加できるようにしています。その辺りはうちに限った話ではないのですが・・・・・・ ネームバリューはかなりの格差ですからインパクトは大きいですし、浸透するのも早いでしょう」

 

 

競合に勝つためには、

 

顧客を知ること、

 

競合を理解することが

 

必要なのは確かじゃ。

 

交流会を通じてそのどちらもうまいことしてやられたの。ここから先は競合との違いを強調するため、より明確なメッセージを市場に提示してくるじゃろう」

 

「数日見学に来ただけですから手の内をすべてさらしたわけではありませんし、こちらも清洲予備校には見学に行っていますからお互い様ですが、なんだかもやっとしたものを感じますね。何かフェアではない気がします」

 

「強力なライバルの出現ということになるが、引け目など一切感じる必要はないぞ。日本資本主義の父と呼ばれ新一万円札の肖像でもある渋沢栄一氏の言葉には、

 

商売をする上で重要なのは、

 

競争しながらでも道徳を守るということだ

 

とある。相手方には大義はあっても道徳がないのじゃから自ずと崩れる。はじめさんはこれまで同様、真摯に教育に向き合い、誠心誠意の姿勢で講師や生徒に対応していくのじゃ。挑発されても相手に敵意を見せぬように。

 

我慢強く、道徳を守ること、

 

それが一番の競合との違いになる

 

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