2024年もいよいよ終盤の10月に突入。
今年も残り100日を切ったかと考えると1年が経つのはほんとうに早いと感じる。
2学期の中間テストも目前に迫っているが、並行して中学受験を控えた小学6年生も重要な時期を迎えていた。
志望校を決める模試が続いている。
夏期講習会からの入塾を含めオンライン生は37名まで膨らんだ。
その中で中学受験をする小学6年生は12名。
都内受験生が8名、関西圏が3名、愛知が1名という内訳で昨年の8名受験の1.5倍の人数となった。
オンライン部門は石川をリーダーに、大久保、春日、井伊、そして私の他に、9月から働き始めた45歳の鳥居、27歳の大賀2名という2名の男性(共に都内在住)を加えて大所帯となっている。
鳥居、大賀の両者は講師の経験があり、都内受験指導もしていたことから都内受験生1名ずつの担当をお願いした。
昨年は中学受験全員合格で一気に知名度を高めただけに、今年も目標は全員合格である。
ただし、御三家に匹敵するような難関中学志望者も数名おり、昨年よりも確実にハードルは高い。
そんな矢先にクレームが入った。
オンライン生の中で特に難関校を志望している小学6年生の女子生徒だ。
担当は新人の大賀。
内容のクレームは、「大賀先生は応用問題の解説はとてもわかりやすいのだが、基本部分でミスが出たり、わからないことへの指摘が厳しすぎる」というものだった。
大賀としては、超難関校を志望していながらこの時期にそんなこともできないのは自覚が足りないと判断しての対応なのだろう。
大賀は他の学年の生徒も担当しているのだが、それぞれの家庭に確認してみると、どうも感情のコントロールがうまくできていないような様子だった。
有名一流大学出身で印象も良いため即採用を決めたのだが、働き始めて短所が明らかになってきている。
おそらくこれが原因で以前に働いていた大手進学塾も退職したのではないだろうか。
もしかすると本人はその問題点に気づいていないのかもしれない。
新規雇用について、顧問税理士の天海さんからアドバイスを受けていたので慌てることはなかったし、頭ごなしに叱りつけもしなかった。
もちろんこの状態を放置し続けると問題行動がさらに拡大するのは火を見るより明らかだ。
天海さんが強調していたのは、
問題行動については
タイムリーに対応すべき点と
じっくりと話をすべき点である。
そして注意すべきは、
話をする際に命令口調ではなく、
問いかける方向で会話を進めていくことだ。
これはコーチングの傾聴と通じるものがある。
問いかけ、答えを考える中で自問自答させ、気づきを与える手法だ。
リモートワークはその特性上、直接会って話をする機会が圧倒的に少ない。
コミュニケーション不足によって会社の理念やこだわってほしい顧客対応などが伝わりにくい。
だからこそ今回の話し合いはそういった私の思いを交えつつ、「何を目的に働くのか」、「誰にどうなってほしいのか」、「自分はどうすべきなのか」といった項目について考えてもらう機会にしたかった。
天海さんは、自己啓発のセミナーで世界的に有名なデール・カーネギー氏の
『命令を質問の形に変えると、
気持ち良く受け入れられるばかりか、
相手に創造性を発揮させることもある』
という言葉を引用されていた。
大賀のポテンシャルは間違いなく高い。
その力をしっかり引き出し、実力を発揮させられればオンライン部門はさらに活気付き、評判が高まる確信があった。
都内受験の合格率も安定していくだろう。
そんな状況を作り出すためにも、今回の私の大賀への対応は重要である。
まさに経営者としての手腕を問われるところだろう。
「ピンチはチャンス」
その言葉を胸に、私は大賀とのオンライン会議を日々行ってくことになる。