2025年1月はあっという間に下旬となり、世間の雰囲気は正月ムードから通常モードに移行している。
もっとも、受験を控えた子どもや親にとっては年末年始からそのような浮かれた感じはない。
塾講師も同様で、みなピリピリとした緊張感を自然と放っていた。
先週末に行われた中学受験結果はすでに発表されており、受験した生徒は全員合格している。
これは嬉しいニュースだが、あくまでも滑り止めで、本命の受験はこれからだ。
そんな中、個別指導とオンライン部門の両方で活躍が目まぐるしい若手の井伊と面白い話題で盛り上がった。
就職先として塾業界を希望している若者が減っているという話である。
働き手不足の時代にあって、他にもっと魅力的な就職先があれば希望者が減るのは当然で、残業や休日出勤が多く、他業種へのキャリアチェンジが難しい塾講師は選ばれにくい。
だがそれだけではなく、井伊は「AI(人工知能)」の影響力拡大も塾講師が正社員としての働き口として避けられる原因なのではないかと推測していた。
確かにここ最近のAIの進化は驚異的だ。
日常生活の一部になっているどころか、AIがなければ成り立たないような社会に変化している。
ビジネスの形も大きく変貌しており、井伊が考えは「AIであれば人間よりも的確に生徒の弱点を補強し、さらに伸ばすカリキュラムを迅速に提供できる。いずれ塾講師の仕事はすべてAIに奪われるだろう」というものだった。
もしAIが効率的な学習計画を立案し、最適な動画レッスンまで提案してフォローして指導すべて行えるのだとすれば、講師は最少人数で済み、人件費はまったくかからない。
レッスンの料金も引き下げできるだろう。
本当にひとり経営で多くの生徒を対応できるようになる。
経営者にとっては喜ぶべき環境なのかもしれないが、そうなると今ある多くの学習塾が淘汰されていくのではないだろうか。
いろいろな学習塾が乱立して競う合う必要がなくなるからだ。
AIの進化、少子化、そう考えていくと、若者が塾業界は先細りと考えるのもうなずける。
人間の知性とAIの知性が融合し、新しい超知能が誕生し、生活も仕事も世界が大きく変わる瞬間を「シンギュラリティ」と呼ぶと、顧問税理士の天海さんが以前に話をしていた。
シンギュラリティは当初2045年と予想されていたが、
AIの進化が想像以上に速く、
到来は前倒しになるだろうとも言っていた。
AIを悪魔のように呼ぶ声もある一方で、天海さんはマイクロソフトを創業したビル・ゲイツ氏の言葉を引用していたのが印象的だった。
「AIは我々の友人になれる」
そういう側面ももちろんあるだろう。
問題はこの友人とどう付き合っていくかだ。
AIがさらに進化していく中で、現状ある多くの仕事がAIに奪われてなくなっていくのは間違いないが、逆に新しい仕事もきっと生まれてくる。
塾講師の仕事はどうだろうか?
AIが的確な問題を提供し、解法を示すことはできても、子どもや保護者の心まで見通して対応するのは難しい。
そこまでできてこその教育なのだ。
ティーチングはAIに任せて、塾講師は心の成長をサポートするコーチングに専念するという役割分担もある。
AIにはできず、
「人間だからこそできるサービス」が
塾業界には必要なはずだ。
その見極めとAIの有効的な活用方法を追求する学習塾が生き残っていくのではないだろうか。
現状としては新しく進出してきた大手進学塾としのぎを削る毎日になっているが、将来を見据えて、AIと共存できるビジネスモデルをいち早く構築していく必要がありそうだ。