5月も中旬以降となれば、中学校の定期試験対策や夏期講習会募集に向けた準備などで慌ただしくなってくる。
ただ、もうしばらくは、やりたいことにチャレンジできる時間もあった。
ということで今日も昼食は顧問税理士の天海さんと一緒だ。
天海さんと話をしていると多くの気づきを得ることができ、今後の方針や取り組みをよりブラッシュアップできる。
「トランプ関税の問題は今後も長引きそうですが、アメリカ側の強硬姿勢がやや緩和されて、市場も落ち着きを取り戻してきましたね。日銀も利上げは思いとどまったようですし。最悪なシナリオは回避できたのではないでしょうか」
「大統領就任100日でこれだけ多くのアクションを起こした大統領はかつておらん。まだまだ何が飛び出すか安心はできんの。中国との落としどころについてもはっきりしてはおらんじゃろうからな。アメリカは本気で世界のサプライチェーンを変える覚悟のようじゃ」
「確かに今後の貿易は大きく変わりますね。アメリカがこのまま保護主義を貫くようなら、日本の企業もアメリカ市場頼みから方向転換を余儀なくされそうです。自由貿易がどうなるのか、大きな時代の転換点ですよ。特に日本としては自動車産業の行方が気になりますね」
「はじめさんの学習塾もこれを機会にグローバリゼーションを進めていく気かい?」
「それはやっぱり考えますよ。日本経済が低迷していけば、日本市場も縮小していきますからね。リスクヘッジという視点からも国際化という流れは必要かと」
「ほう。では海外に進出するということか」
「あくまでも市場拡大という話で、現地の人を雇ったり、海外に教室を構えたりといった大げさな話ではありません。今はオンラインによるレッスンが可能ですから、海外に住む日本人向けのサービスは提供できるなという程度です」
「なるほど、グローバリゼーションとなれば、その国の文化・宗教や価値観などへの理解も深めなければリスクが大きいが、顧客が日本人であればハードルもいくぶん下がる」
「どちらにせよダイバーシティ(多様性)への理解は必要になりますが、現地の日本人とのやり取りを通じてそういった点も養っていくこともできるのではないかと。まあ、国内の市場はおろか、地元の市場でもあたふたしている状態で、ずいぶん生意気な主張だと我ながら思います」
「現地ニーズさえあれば面白い取り組みではないか。改めての初期投資も必要ないしの。ネットビジネスのメリットじゃろう。ニーズはあるのか?」
「ええ、現在海外に在住していて、子どもの受験期には帰国するという家庭からの実際に問い合わせもあります。もう少し海外の市場にアピールできたらその声も多く聞こえてくるでしょう。帰国子女の枠での特殊受験や、インターナショナルコースは入学後の学校の授業がすべて英語だったりという特徴もあるのでしっかり調べて対応していく必要があります。情報不足でのサービス対応は信頼失墜のリスクがありますからね」
「まずは現地ニーズを把握できれば、
グローバル展開の第一歩は踏み出せる。
モルガン財閥の創始者であるジョン・ピアモント・モルガン氏の言葉にも、
『できるだけ遠くへ行こう。
そこに着けば、
もっと遠くの景色が見るはずだ』
とある。
今では気がつかないサービスのあり方や
視点を得るチャンスかもしれんぞ」
「そうですね。今年は海外の顧客を1件、2件と対応していく中で、どういう仕組みが一番最適なのか試行錯誤してみます。自社のWebサイトの中身に付け加え、SNSを利用して募集していけば少しずつ集客できるでしょう。海外の教育現場の実情を知る絶好の機会にもなりそうです」