【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
税理士の天海さんのアドバイスをもらって、最適な物件を決定。
家賃は月10万円。初月家賃10万円、不動産手数料10万円、敷金2ヶ月分で20万円の合計40万円の費用は確定となった。半年先の家賃も含めると90万円。充分に想定内だ。
次は内装工事だが、居抜きの物件とはいえ、授業スペースと学習面談室を区切るためのパーテイションは必要だろう。この点については、組み立て式のローパーテーションを購入すれば、内装工事までしなくても済みそうだ。フローリングもそのまま使える。
「ということは、備品さえそろえればすぐに始めることも可能だな」
備品としては、組み立て式のローパーテーションの他、自分が利用する机と生徒用の机、それぞれの椅子、ホワイトボードにマーカー・イレイサー、プリンター、教材棚、教材、パソコン、シュレッダー、電話、時計、ゴミ箱、掃除用具、空気清浄機に感染予防対策グッズ。
インターネットでひとつひとつ調べていくと結構な金額になる。
「こんなに備品にかかるのか、しかもこれに看板費用もかかってくるんだ・・・・・・ 広告費もかかることを考えると、なるべくコストを抑えたいところだけど」
やはり決める前には天海さんに報告しておいた方がいい。もしかすると私の思いつかない何か別の方法があるかもしれないからだ。
「ホッホッホ、これはまたずいぶん大きな買い物になるの」
天海さんの税理士事務所に向かい、備品の見積書を見せると、天海さんは笑いながらそう言った。私としても自分の家にあって、使い回せる物は省いたつもりなのだが、それでもやはり限度がある。机や椅子やホワイトボード、プリンター、ローパーテ-ションなどは新規で購入するしかない。
「必要経費ですね。最低限のサービスは提供できないと、さすがに生徒が離れていってしまいますからね」
「確かにどれも必要な備品じゃの。欠かすことはできん。飛沫防止のパーテーションはこのご時世絶対に不可欠じゃし、親御さんと話をするスペースを確保するためにもローパーテーションはあった方がいいな」
「そうですよね。当初の見積もり以上の金額になってしまいましたが、内装費がほとんどかからないと考えると、まあ許容範囲かなと思います」
「しかし、どれも新品を購入する必要はあるまい。
中古でも良好な品質の物があるじゃないか?」
「中古ですか。なるほど。机や椅子の中古の物を扱っているところを探せばあるのか・・・・・・」
「ほれ、画面を見てみよ」
天海さんのノート型パソコンにリサイクルショップのサイトが映し出された。
「へー、こんなスタックテーブルが1万円で購入できるんだ。椅子も3,000円。ホワイトボードも5,000円か。複合機もこのサイズで6万円じゃ、半額ですね」
さらにいろいろなサイトを調べていって驚いたが、かなり品質の良い物が予定の半値で購入できた。しかもL字型のローパーテーションも中古で販売しており、5万円ほど。
「こういうサイトもあるぞ。廃業する学習塾が備品の引き取り手を探しておる。ボロボロの物では使えないが、案外掘り出し物もあるかもしれん」
リサイクル商品とは考えもしなかった。
新規開業だからといって
なにも新品ばかりの備品で
そろえる必要はないということだ。
品質が良ければまったく問題がない。
そうすれば他に費用を回すことができる。天海さんに相談していなかったら、無駄に大切なお金を費やしてしまうところだ。やはり何事もひとりで決めず、相談するのが正解だと改めて思うのであった。