【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
7月に入り、暑い日が増え、大雨による災害のニュースも多くなってきた。
ここ数年の夏と同じような感じだ。
そうなると夏期講習会開始まであと一ヶ月を切っている。
以前に講習会に参加してくれた一般生への電話掛け、学校の門前でのハンディング、学習塾紹介サイトでのアピールなど、募集活動は真っ盛り。
同時進行で研修中の二人の学生アルバイト講師には、生徒への対応に慣れていくため次のステップに進んでもらう。
自習室を活用している生徒の質問受けを担当するのだ。
夏期講習会からは本格的に個別レッスンも担当してもらわなければシフトが回らない。
学習塾にはあるあるの話だが、指導力はさておき、若いというだけで人気が出る。
男性の本多は身長も高く、見るからに体育会系で男女関わらず質問が殺到していたし、女性の榊原もお姉さん肌なので女生徒の受けがいい。
おかげで私は他の業務に時間が割けるようになって助かったのだが、新人講師は注意して見守っていないと時に暴走してトラブルを引き起こす心配がある。
生徒との距離が近くなりすぎるのだ。
年齢自体もさほど変わらないので、友達感覚になりがちだ。
時にはそこに恋愛感情が生れてきて大きな問題に発展することがある。
研修を担当している酒井にもその点は注意するように伝えていたのだが、なにせ忙しいため生徒がいる時間帯はそこまで目が届かない。
何日か経過して、本多も榊原も生徒とLINE交換していることが発覚。
質問受けが対応しきれないことが理由でそのような状態になったようだ。
私の学習塾ではそのような個人的な関わりを持つことを禁じている。
講師側に変な気がなくても、相手は子どもだ、そこからどんな誤解が生れたり、評判を落とす事態になりかねない。
もちろん本多も榊原もそのことはよくわかっていたようだが、SkypeやZoomでのオンラインレッスンと、LINEでの質問受けに大差はないと判断したらしい。
そのことについて事前に塾長である私にも、研修担当である酒井にも相談や報告はなかった。
私は当事者の二人をすぐに呼び、事実確認をした後に激しく叱った。
暴力を振るうなんてことはないが、机は強く叩いた。
理論整然に説明するように説教する気などない。
ルールを破ったことを単刀直入に叱ったのだ。
日ごろ温厚な人柄で接していただけに、私がそこまで激しく怒っていることに二人は驚いていた。
パワハラという社会問題がよく取り上げられているが、叱らないといけないときに叱れないのも問題だ。
部下の成長のためには、何がダメなのか、タイムリーに伝えて叱る必要がある。
中途半端な対応をしてしまうと同じ失敗が繰り替えされるので、ここから学び成長するためには強く叱る必要もあった。
この点については難しい対応になるが、以前、顧問税理士の天海さんにアドバイスを求めたところ2つの答えが返ってきた。
1つは二宮尊徳氏の言葉。
『可愛くば5つ数えて3つ褒め、
2つ叱って良き人となせ』
もう1つは徳川家康公の言葉で、
『怒ったときには、
百雷の落ちるように怒れ』
というものだ。
相手の人格を否定するような感情的な怒り方はNGだが、ダメなものは断固としてダメだということはやや感情的になってでも強く伝える必要がある。
それが本人たちの将来にとっても、組織の将来にとっても大事だからだ。
強く叱って反省したようであれば、
すぐさまこちらから
いつも通りの雰囲気で接して、
互いに気持ちを切り替える。
褒めるべきときは褒めてきたので、このメリハリがあってこそ、叱ることを怖がらずに行えるのだ。