【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
「そうか、そうか、最初のお客さんがついに来ましたか」
電話が鳴った翌日に、早速事務所に行って私が報告すると、天海さんは嬉しそうに笑顔を浮かべてそう答えてくれた。
「とは言ってもまだ無料体験会への参加が決まっただけですから、夏期講習会の受付第一号になるかどうかはまだわからないんですが」
「いやいや、無料であっても有料であってもお客さんはお客さん。はじめさんが地道に活動した成果じゃな。ここから大切なことは、
今回生れた縁を大事にするじゃの」
「そうですね。今日の夕方には部活を終えてから授業を受けに来てくれますので、できる限りの手厚いサポートをしていく予定です。その後で母親を交えて三者面談を実施します。気に入ってくれたら、そこで即申し込みということになるかもしれません」
集団指導だと、日ごろ勉強の習慣のない生徒は授業スピードにビックリして通塾を諦めるケースもあるが、個別指導であれば問題はない。どんなに成績が厳しい状態であっても、生徒の学力に合わせて指導ができるので、スピードやレベルに戸惑うことはないはずである。
後は、「わかった!」という感動を与えられるかどうか。
今までできなかったことができるようになることや、今までわからなかったことがわかるようになる感動は、生徒の勉強への見方や姿勢を大きく変える。この瞬間を作り出せるかどうかで、夏期講習会への申し込みに繋がるかどうかが決まるだろう。
「経験豊富なはじめさんのことじゃから、授業や指導、学習アドバイスの面談についても問題はあるまい。きっと生徒も親御さんもはじめさんの学習塾を気に入ってくれるはずじゃ」
「そうなってくれることを願っています。久しぶりの生徒対応なので緊張していますが・・・・・・ おそらく実際に始まったらいろいろ思い出して的確なアドバイスをしていけると思います」
「ウム。そうなると、問題は次じゃな」
「次? 2回目にどんな対応をするかということですか?」
「いやいや、そうじゃない。次のお客さんのことじゃよ。お客さんがひとりだけというわけにはいかんじゃろ」
「まあ、確かに。ただ、今回のようにハンディングやポスティングなどがきっかけで目を向けてくれるご家庭も出てくるのではないでしょうか。ギリギリまでハンディングを続けるつもりですし」
「その努力はもちろん継続すべきじゃ。しかし、状況が動いた以上、新しいチャレンジもできるのではないか?」
「新しいチャレンジ? ここまでの取り組み以外にまだ私に何かできることがあるということですか? なんだろう・・・・・・」
「そう深刻な顔で悩むような話ではない。これまではじめさんが取り組んできたことに比べたら一瞬でできることじゃよ」
「一瞬でできること? 天海さん、ますますわからなくなってきました。次のお客さんの申し込みのために一瞬でできることって何なのでしょうか。ぜひ教えてください!」
「おそらく今日の指導や面談の中で勉強についてや、将来についていろいろな話をするじゃろう。もちろん夏期講習会の説明もするじゃろな。
そこで勇気を持って
ひと言を付け加えられるかどうかが
重要なポイントになる」
「ひと言を付け加える? なるほど。わかりました! 夏休み一緒に勉強したいお友達がいたら、ぜひ声をかけてみてくださいというひと言ですね。
確かにチラシやホームページ以上に
広告効果があるのは口コミです。
そこをこちらからしっかりお願いするわけか。それは次の生徒の申し込みに必ず繋がりますね!」