【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
開校して初めての夏期講習はもう終盤、いよいよ夏休みも終わりを告げ、2学期スタートも目前に控えていた。
夏期講習会の募集では最低でも目標20名、売上60万円を目指して準備を進めたが、結果は5名の参加、売上は15万円だった。
ということで夏期講習会は完全な赤字。
夏期講習会に参加してもらい、そのままの流れで入塾して通常授業に通ってもらうのが学習塾の一般的なスタイルだが、この募集数ではどれだけ入塾率が良くても2学期スタート目標の塾生数50名、売上月75万円には遠く及ばない。
かなり悲観的な状況ではあるものの、天海さんのアドバイスを受けて、今できることに全力を尽くした結果、夏期講習会に参加してくれた小5の女の子、小6の受験生男子2名、中2のバレー部女子2名の5名全員が入塾を決めてくれた。
母数の少なさという違いはあるものの、塾講師を17年以上続けてきて、入塾率100%は初めての経験だった。
良くても60~70%の入塾率で、講習会しか参加しないと決めている家庭が多い場合の入塾率は20%ほどに低迷することもある。
個々に寄り添い、丁寧な指導をし、熱心に家庭への連絡を続けてきたことが実を結んだことは素直に自信になる。これ自体はとても嬉しい結果だった。
しかし、2学期スタート時の塾生数は5名。小6と中2は自習室を制限なく利用できる仕組みにして月謝を5,000円上げて、2万円にしたので、月の収入は9万5,000円である。それでも教室の賃貸料月10万円を支払うだけで赤字だ。
夏期講習会でそれなりに手応えをつかむことはできたものの、このままだとどんどん貯蓄を切り崩していくことになってしまう。
現状は日本政策金融公庫からの融資の返済は、据え置き期間なので利息分の5,000円で済んでいるが、あと3ヶ月もすれば、元本の返済も合わせて毎月38,000円の返済額となるので、毎月の赤字額はさらに膨らむだろう。
そうなると、ここから3ヶ月の期間でいかに集客できるかどうかに命運がかかっている。
「顧客と販路開拓」これは夏期講習会の募集時にも苦労したところで、2学期になっても積極的に取り組んでいかなければならない項目だった。
ただし、夏期講習会の募集時と今では大きな違いがある。
それは実際に塾生が在籍しているという点だ。
この違いはとてつもなく大きい。なぜなら学習塾を選ぶときの重要項目は、ネームバリューや価格以上に「評判」「口コミ」だからだ。
生徒や家庭といった顧客を
満足させられているところに人は集まる。
だからこそ2学期についても夏期講習会同様、「生徒に対し今できることに集中する」これが最大のテーマだ。
生徒の学習意欲、勉強に向かう姿勢、そして学力を周囲がビックリするほどに変えることができれば、確実に評判になるだろう。それが、自分が起業した学習塾の顧客・販路開拓の鍵を握っているのは間違いない。だからこそそのために個別に徹底的なカリキュラムを作成した。これがどれだけの成果を生み出すことができるのかで、2学期の塾生数は決まってくる。
競合よりも生徒たちにより大きな影響力をもたらすことができるかどうかだ。
時間的な余裕はあまりない。小6の受験生は9月の模試、中2のバレー部2名は9月の定期試験。ここが目標だ。そこまでに死ぬ物狂いでやれることはやる覚悟だ。
そして生き残るためには、「運」も味方に付ける必要があるだろう。
顧問税理士の天海さんが、先日に会った際、別れ際にこう言っていた。戦国大名で、土佐藩の祖である山内一豊の言葉だ。
『命を捨てる覚悟で運を拾わねば、
運などは拾えるものではない』