【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
評判が上々で、塾生数が増え、今月末から始まる冬期講習会の受付も好調。それ自体はここまでの取り組みの成果として嬉しい限りなのだが、何せ働き手は自分ひとりである。顧問税理士の天海さんはとても心強い味方だが、もちろん生徒と直接関わることはない。
問題は『生徒数が増えても今のサービスを低下させずに維持できるか』という点だった。
「現実問題として、今の生徒さんたちへのサービスを維持するとなると塾生数は何人ぐらいが許容範囲なんじゃ?」
「個別指導という点でしたら、時間帯を上手く組んで、同じ学力の生徒を2人・3人同時に対応していけば30人までは問題ないです。その場合、土日祝日もフル活動になりますが。ただ、それぞれ学習面談を定期的に行い、カリキュラムをそれぞれ組んで、その確認や修正、定期的な家庭との連携などの時間もかなりかけていますので、僕ひとりでこのサービスの質を維持しようとすると15人が限界かもしれません。全員が完全にバラバラの学力で、別学年ということになるともっと少なくなりますね」
「起業当初の目標は塾生数50人じゃったが、これはひとりで対応するには無理な数字じゃったということか」
「そうなった場合は人手も増やす必要があるかなと考えていました。ただ、想定以上にサービスを手厚くしていったので、思っていた以上に対応できる人数が限定されてきています」
「まあ、その分だけ予定よりも月謝の設定は上げているからの。Win-Winの関係は築けているじゃろう。こうなると早めに人手を増やす必要があるの」
「とは言っても、授業力や対応力があって、現状のサービスを理解し、生徒の状況を把握してもらうとなると探すにも、現場に立ってもらうにも時間はかかりますね。キャリアのある人であればそこまで時間はかからないですが、学生を雇うとなると研修もみっちりやらなければなりません。中途半端に人数だけ帳尻合わせてもサービスの低下に繋がってしまいますから」
「今から募集や面接を初めていったとして、実戦投入は4月ごろじゃの」
「今のこの学習塾の売上でキャリアのある人を雇う余裕はありませんから、やはり学生のアルバイト頼みになりますね。かなり忙しい年度末ですが、学生への研修も含めそちらの動きも両立していくしかないと思います」
「となると、冬期講習会と明けの3学期ははじめさんひとりでやり切るしかないの。サービスを低下させずに効率化していくためには、大げさな話じゃが少しずつDXを取り入れていくことじゃな」
「デジタルトランスフォーメーションですか。今の時代、どこの業界もどこの起業もDX、DXですね」
「経済産業省のDXレポートで2025年の崖が発表されてから、どこも危機感を募らせているからの。本来のDXとは、サービスとデジタルを融合してイノベーションを起し、既存の組織体制や企業文化も改革するものじゃが、
まずはサービスの効率化という点で
DXに取り組んでみるべきじゃな」
「オンライン授業を採用して別途塾生は増えてはいますが・・・・・・」
「そのあたりのスキームを上手く利用するのがいいじゃろう。SkypeやZoomで土日の午前中や夜の空きの時間帯にオンラインの三者面談を行う。そこでカリキュラム表も画面共有しながら埋めていき、その後のデータも共有して家庭でも確認できるようにしていく。
日々の状況もそこに入力していけば、
学習面談・家庭への連絡・
カリキュラムの作成や編集・
生徒の状況管理まで一元化できて、
確認もしやすいし、
手間もかけずに
現状のサービスを維持できるはずじゃ」
「なるほど、そうすれば授業対応できる生徒の人数も増やせますね」