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税理士がサポート!『はじめて起業ものがたり』 「起業って何から始めればいいのか㊷ お客様のクレームへの対応法その1」

【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】

 

今回のポイント
 まずは相手の言い分を受け止める 

 

 

年の瀬が迫ったこのタイミングで思わぬトラブルが発生した。

 

12月末から始まる冬期講習会に申し込みしている生徒の無料体験会での出来事である。夏期講習会は募集に苦労したが、塾生の定期試験での健闘もあって冬期講習会の申し込みは11名に達していた。まとめて行うにはなかなか難しい人数。しかし、塾生の授業対応との兼ね合いと、あくまでも無料体験ということもあり11名全員で強行実施。申し込み順で2つのグループに分けて、30分個別指導、30分自習という形式で行い、個別指導の雰囲気を味わってもらうことにした。

 

問題は、このとき自習しているグループの中で勉強をせずお喋りを続けている2人の生徒がいたことである。塾生の中2女子7人が日ごろとても熱心に勉強に取り組んでいるので、そのような事態が起こることを想定していなかったというのは、自分の大きな油断だった。しかもそれに気づいたのは無料体験会が終了して、生徒が帰宅した後のことである。

 

 

夜22時、電話が一本鳴った。無料体験会に参加した1人の生徒の親からの電話である。

 

内容は、授業時は集中して取り組めたが、自習の時間はまったく集中できなかったというもので、その原因が私語をしていた生徒がいたからだった。冬期講習会で勉強を頑張ろうと意欲的になっている状態に水を差すこの出来事に対し、親がご立腹なのも当然な話である。私はすぐに謝罪し、今後このようなことが起こらないよう対応していくことを約束して電話は終了した。

 

後日、塾生にこの出来事を伏せながら、私語をしていた2人について聞いてみたところ、学校でも授業中の姿勢が悪いことで有名な2人であることがわかった。それが事前にわかっていたらグループも分けて対応したのだが、よりによって自習時も2人は隣同士だったのだ。これは冬期講習会時に注意しなければならない。

 

しかし、問題はさらに悪化。

 

クレーム対応した家庭から3日後にまた電話があり、問題の2人の生徒が参加するのであれば冬期講習会に参加させられないと告げられた。さらにその後、同様の電話が他の家庭からもあった。

 

 

私は、私語をした2人の生徒を選ぶか、クレームのあった2人の生徒を選ぶかの決断を迫られることになったのである。

 

私語をした生徒の悪評はかなり有名のようで、このままだと他の講習会生だけでなく、塾生にも悪影響を及ぼすリスクがあった。この2人の参加を拒否すればそのリスクはなくなるのだが、一度の私語で参加を取りやめさせるのも大きなクレームに発展する可能性がある。

 

私はすぐに顧問税理士の天海さんに電話で相談をした。以前のように講師として務めているのであれば塾長に相談して対応を検討することができるのだが、今は自分が塾長の立場。しかも独りで運営しているので相談できる相手がいない。

 

「そうか、子どもさん相手の商売じゃからそういった問題も起こるじゃろうな。クレームへの対応で肝心なことは、

 

まずは相手の言い分を

 

しっかりと聞いて

 

受け止めることじゃ。

 

下手に言い訳したり、

 

反論すると火に油。

 

自分の話を受け止めてもらえている

 

と感じれば、

 

感情的になっている部分は収まってくる。

 

はじめさんの対応は間違っておらぬな」

 

「ということは、クレーム通り、私語をした2人の参加をやめさせるべきだと?」

 

話を受け止めるのと

 

受け入れるのは

 

似ているようで違うものじゃ。

 

受け入れなくても回避できる策を考えるべきじゃろう」

 

 

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