【このお話では、サラリーマンを続けていた40歳の松平はじめが、起業に挑戦し、税理士からアドバイスを受けて、成果を出すための大切な気づきをいろいろと得ていきます】
2学期の目標として中学受験を希望する塾生を増やすことを掲げた私は、マーケットとターゲットを絞りオンライン授業で対応する戦略について、顧問税理士の天海さんに相談すべく、久しぶりに天海さんの事務所を訪れていた。
「これまでの講師経験で、この時期に焦って塾や家庭教師を探し始める家庭が一定数いることはわかっています。そのほとんどが合格ラインに届いていない生徒ばかりですから指導は厳しいものになりますが、仮にそこから合格者を輩出できれば実績にもなり、来年度以降の塾生数アップにも繋がると思うのです。幸いなことに人手不足は解消されましたので、動きはとれます」
「ほう、成果が出ても歩みを止めず、果敢に新しいチャレンジに向かわれる。そのハングリー精神はご立派じゃ。しかし、中学受験を希望して今から塾を頼る生徒が、この近郊に多くいるとは思えんがの」
「はい。ですからマーケットは都内、またはその近郊。あとは関西です。かなりの数の中高一貫校がありますからね。マーケットの規模はこの辺りの比ではありませんよ。しかも需要と供給のバランスが崩れるのがこの時期からです。一流の進学塾は、もう受験生の受け入れは行わないでしょう。ということは需要が溢れるということです。中小の学習塾にとってはチャンス到来です」
「なるほどの。しかしあと4ヶ月、5ヶ月で志望校合格に向けた責任ある指導ができなければ意味はないぞ。不合格者を多く出したのでは悪評が広がるのは避けられない。そのリスクは考えてのことなのか?」
「第1志望校にまったく届かない学力の生徒は、志望校変更についての面談を行い、常識の範囲で誘導できた場合のみ受け入れます。ターゲットは、合格まで偏差値が5から10離れている生徒ですね。それだけでも対象の生徒数はかなりの数になると思います」
「つまり合格の可能性がまだ残されている生徒に限定するということじゃな。それにしても、すべての受験生ががむしゃらに勉強するラストスパートの時期。仮に偏差値を1上げるにしても難儀なことじゃろう」
「ええ、そこは覚悟の上です。その生徒の状況にもよりますが、最低でも週に3回、または5回はレッスンを行っていただく条件になるかもしれません」
「授業回数が増えれば、学力アップのチャンスも広がるし、売上も伸びる。Win-Winの関係ではあるの」
「このマーケットのチャンスはそれだけではありません。例えば都内の一番手の進学塾でには自習室というものがなく、不足分は個別指導の塾に通って補習を受けるか、家庭教師を雇って補うというスタンスです。実はもう少しで合格ラインという生徒は、進学塾の塾生にもいて、ここもターゲットにできるんです。つまり進学塾にこれまで通り通いながら、私の塾で補習を受けたり、オンライン授業で質問受けをするという構図ですね」
「まだいくつか懸念材料はあるじゃろうが、
そのすべてを潰してから
行動に移していたのでは
チャンスを逃すじゃろう。
桶狭間の戦いの直後、家康公がこれまで従属していた今川氏から独立した際もそうじゃった。
松下幸之助氏もチャンスについてこう述べている。
『60%の見通しで判断できたら、
決断することだ。
後は勇気と実行力である』
とな。問題が浮上してくるかもしれないし、修正点も見えてくるじゃろうが、ここはまず始めてみることが肝心じゃな」
「天海さんに背中を押していただけると心強いです! 早速始めていきます」