※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「おう、ここだ、今日はこの店で夕食にしよう」
マモル「居酒屋ですか…… 初めて来るお店ですよね? 先輩は何度か利用されたことがあるんですか?」
ショウ「俺のコンサルティング会社の新しいクライアントの店さ。このコロナ禍で売上が激減していてね。閉店するかどうか悩んでいた末に相談に来られたんだ。そこからもう1ヶ月以上は経過している。マモルの感想としては、この店はどうだ?」
マモル「どうだと聞かれてもまだ料理も食べていないですから何とも言えませんが、お客さんはそれなりに入っているんで、味は定評がありそうな気がしますね。料金もリーゾナブルな設定ですし」
ショウ「後は?」
マモル「え? 後ですか? まあ、テーブルとテーブルの間に飛沫感染防止のパーテーションがありますし、消毒液も設置されていますし、店員さんもマスクしてウイルス対策をしているんだなってことはわかりますね。でも、それはもう見慣れた光景ですが……」
ショウ「なるほど。そっか…… ということは、まだまだアピール不足なのか」
マモル「え? アピール不足? それって、先輩がアドバイスされた内容に僕が気づいていないってことですか? もしかしてあれですか、以前にもありましたが、テイクアウトを始めたみたいな感じですか?」
ショウ「いや、この店はテイクアウトをもともとやっているんだよ。それは別に新しい試みではないんだ。しかし、マモルに気づいてもらえないようじゃ、努力不足は否めないな。すぐに店長に伝えよう」
マモル「そんな、だってまだお店に入ってから5分も経過していないですよ。もう少しいろいろ観察させてください。まるで僕にそういった視点が足りていないみたいじゃないですか」
ショウ「それがな、5分で充分なんだ。むしろ5分で気づかれないなら意味がないんだよ」
マモル「えー? そう言われてみれば、心なしか若くて美しい店員さんが多い気がします」
ショウ「男性の定員ばかりだろ。そこはまったく関係ないな」
マモル「ですよね…… すみません、降参します」
ショウ「いや実は、この店に入る前に、感染予防対策実施中ののぼりを立てていたり、三密対策の協力を仰ぐポスターやPOPを店外や入り口に貼っているんだ。もちろん店内にもトイレの使い方など感染防止対策についてのPOPをいくつも貼っている」
マモル「そうだ! それを見てこのお店なら安心して食事できると感じました」
ショウ「感染予防対策を様々やっているという点を積極的にアピールして、顧客に戻ってきてもらうことが狙いなんだよ。ここまでやってくれているんだったら行ってみようと思ってもらえるようにだ」
マモル「なるほど、そういった安全性をしっかり伝えていく努力をしているわけですね。確かにどのお店よりも徹底しているのは伝わってきます」
ショウ「どこを変えていくのかという点で、ここに行き着いた。積極的に安全性を伝えていくという方向性だよ。アメリカの第16代大統領であるエイブラハム・リンカーン氏はこう述べている。
『待っているだけの人たちにも
何かが起こるかもしれないが、
それは努力した人たちの残り物だけである』
とね。だったら待っているだけでなく、積極的にお客様に戻ってきてもらえる努力をしようということに決まったのさ。だからこのことはSNSも利用してどんどん広げている。その結果、少しずつ客足が戻っていているんだ」
「飲食店の二極化が激しくなっているとは聞いていましたが、そこはやはり工夫や努力の差でもあるんですね」