※これは独立したての経営者であるマモルと先輩経営者のショウの物語です。
マモル「先輩、今日は飲みに誘っていただいてありがとうございます! 最近はまったく外食にも出てなくて」
ショウ「ずいぶんと忙しいみたいだな。かなり繁盛してるのか?」
マモル「いや、お恥ずかしい話なんですが、失敗が続いちゃってまして…… そのフォローにかなりの時間を取られちゃってます」
ショウ「そうか、失敗が続く時もあるからな」
マモル「え? 先輩の会社でもあるんですか? 成果出せなくて契約切られたり、顧客のニーズを勘違いしていてクレームになったりとか」
ショウ「うちの会社はないね。と、言いたいところだけど、もちろんあるさ。お前には話していなかったけど、大切なお得意様の信頼を失う大失態をしてしまって大変だったんだよ。そういう時に限って、他にもネガティブサプライズが起こったりして」
マモル「そうなんですか? 先輩の会社って手堅いイメージがあるから、そういう失敗やミスとかとは無縁なのかと思ってました」
ショウ「コンサルタントのひとりとして仕事をしたって、経営者をしていたって、失敗は付き物だよ」
マモル「そんな冷静に受け止められるんですね。僕は今回の件で、心が折れそうになりました。やっぱり視野が広くて、もっとも思いやりのある人間じゃないと、経営者は務まらないのかなって……」
ショウ「何だよ。自信を失って、自分には才能が無いとか思ってるのか?」
マモル「はあ。なんかもっとスイスイ上手くいくと思っていたんですけどね」
ショウ「マモルは、本田技研工業の創業者って知ってるか?」
マモル「ええ、本田宗一郎さんですよね。あのホンダを創った方。ホンダの四輪車の生産台数が世界累計1億台を突破したって、2年前くらいにニュースになっていましたよね。僕とは比較にならない大企業ですよ」
ショウ「本田宗一郎氏の言葉には、苦労や失敗に関するものがいくつかあってな、その中のひとつに、『私がやった仕事で本当に成功したものは、全体のわずか1%にすぎないということも言っておきたい。99%は失敗の連続だった。そして、その実を結んだ1%の成功が現在の私である』というのがある」
マモル「99%が失敗の連続ですか……」
ショウ「もとは浜松の町工場だったからな。苦労もたくさんしただろう。実際に1950年代は経営的にはかなり苦しかったらしい。そこで世界的なオートバイレースへの参戦を決意して、優勝。F1にも参戦して、現在のホンダのブランドが確立されたんだ」
マモル「成功よりも失敗の方が多いってことですか?」
ショウ「割合がどうかは知らないが、本田宗一郎氏はこうも言っている、『企業にも節がある。儲かっているときはスムーズに伸びていくが、儲からんときがひとつの節になる。この節の時期が大切なのだ』とね」
マモル「大切な節」
ショウ「マモルは失敗を怖れて何もしなかったわけじゃない。マモルは立派にチャンレンジしている。チャレンジしないと何も始まらないからな。ただ、チャレンジに失敗は付き物だ。だが失敗は成功の対義語ではないよ」
マモル「じゃあ、成功の対義語は何ですか?」
ショウ「成功の対義語は、何もしないことさ。何もしなければ失敗はない。その代り、成功もないけどな。失敗は成功の基だ。失敗に真摯に向き合い、改善点を見つけ、行動に移せば成功に近づくことができるんだよ。諦めたら失敗は本当に価値のない失敗で終わってしまう」
マモル「そうか、失敗が続いてもくよくよしている場合じゃないですね。自分の能力の低さや不運を嘆いていましたが、そんなことをしている時間が無駄だということに気が付きました。改めて見つめ直して、今回の失敗から多くのことを学びます!」
ショウ「その努力が経営者には必要だよ」