※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「しかし、大変ですね。長い梅雨がようやく終わったと思ったら、今度は猛暑続きですから…… 予想気温が40℃でも驚かなくなっていますよ。先輩は体調どうですか?」
ショウ「今年は例年よりもこまめに熱中症対策をやってるぞ。寝ている間も冷房はつけているし、意識的に水を飲む回数を多くしているからな。オンライン飲み会じゃ、伝わらんかもしれんが、自宅では快適に過ごせているよ。マモルの家はどうなんだ?」
マモル「ええ、家の中では問題なく過ごせています。なので、買い物のため一歩外に出るとこの凄まじい暑さとのギャップに身体がついていけていません」
ショウ「さすがにこの気温じゃゴルフをするってわけにもいかないからな。まあ、お盆休暇の間はゆっくり部屋に引きこもって勉強でもするよ」
マモル「勉強ですか? 先輩がいったいどんな勉強をするんです?」
ショウ「まあ、気の向くままだな。ビジネス書を読むこともあれば、FPの問題集を解くこともある。NHKでホモサピエンス誕生の番組をやっていたら見て、さらに自分なりに調べたりするし、将棋の勉強もすれば、健康についても勉強しているな。あと、青チャートを購入して数Ⅰ+Aから数学の勉強をし直したりしているぞ」
マモル「数学? まさかその歳になって大学受験を?」
ショウ「そんなわけないだろう。最近始まった親バカのドラマじゃあるまいし。今、この歳で勉強してみると、また違った感動があるかなと思ってな。自分の頭の回転力や理解力がどの程度維持できているのかも興味があったのさ」
マモル「先輩はいつも貪欲ですね。しかし、数学の公式なんて、実際のところ社会に出て使う機会なんてないから忘れてしまっていますね。重複順列と重複する組み合わせの違いにかなり悩んだ記憶があります。確かどっちかがマイナス1の階乗だった気がしますね。今考えてみると、たいして役に立たない知識を詰め込むために、学生時代は何のためにあんなに必死に勉強していたんでしょうか?」
ショウ「ハハハ、受験勉強している甥っ子とまったく同じ台詞を言っているな」
マモル「そっか、先輩の甥っ子は高校3年生ですか。懐かしいなあの頃が」
ショウ「仮に時間が経つとほとんど忘れてしまうから、もしくは大人になっても役にたちそうもないから、勉強はしなくてもいいと本気で思っているのか?」
マモル「いえ、そう言われると、しなくていいとは思いませんが…… 受験勉強を通じて忍耐力が身につきましたし、何かを覚えるコツっていうんですか、習得するための手順が身につきました。目標を達成するための努力の大切さだとかも実感できましたね」
ショウ「作家の太宰治氏は『正義と微笑』という作品で勉強についてこう述べている。
『学問なんて、覚えると同時に忘れてしまってもいいものなんだ。
けれども、全部忘れてしまっても、
その勉強の訓練の底に一つかみの砂金が残っているものだ。
これだ。
これが尊いのだ。
勉強しなければいかん』
とね。知識を詰め込むことが大事なことでもなければ、それを覚え続けることが重要なわけでもない。勉強を通じて自分の精神面の畑を耕すことが必要なんだ。それをカルチベートと呼んでいる」
マモル「一つかみの砂金が残っているか……」
ショウ「マモルの言う、目標を達成するために努力の大切さを実感できたというのはまさにその砂金だな。そして将来自立して生きていくうえで本当に宝物のように貴重になるのが、そういった勉強して手に入れた一つかみの砂金なんじゃないのか」