※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「このお店、焼き鳥を塩でなく、タレにしてランチメニューを増やしたんですね。なかなか美味しいです。ご飯がすすみます」
ショウ「緊急事態宣言が発出されて、時短営業が本格化したからな。夜のメニューをランチメニューに変えて対応しているんだろう。どこの料理店もあの手この手で工夫をして、この危機的状況を乗り越えようとしている。それは料理店に限った話ではないが」
マモル「そういえば先輩、確か2013年の世界経済フォーラムでは、日本は困難を乗り越える力に乏しいって指摘されていましたよね」
ショウ「ダボス会議の話か、そうだな。それには日本人の国民性も影響しているんだろう。欧米諸国に比べて、日本人は自己肯定感が低い。それがレジリエンスの低さと繋がっているという見方もある」
マモル「国にも、企業にも、ストレスを弾き飛ばして、環境に適応するレジリエンスの力が要求されてきましたが、まさにこのコロナ禍では顕著ですね。企業レジリエンスが高ければ生き残り、低ければ淘汰される。過酷な環境です」
ショウ「日ごろから企業レジリエンスを高めることに投資していたからこそ、柔軟に対応でき、リモートワークに迅速に切替ても生産性を落とさずにいられるんだろう。外部講師を招いてレジリエンスを強化する研修などを盛んに採り入れている企業も増えていたからな」
マモル「そういった目に見えない部分の投資の積み重ねが、今、大きな差になっているわけですね」
ショウ「ストレスに強く、環境に柔軟に適応できる組織作りなど一朝一夕でできるものじゃない。2013年のダボス会議では日本のレジリエンスは低いと指摘されたが、あれから日本も、日本の企業も、刮目してレジリエンスに注目し、課題を持って取り組んできている。それがどこまで高まったのかを証明する機会でもあるだろう」
マモル「ニュージーランドはコロナ感染の封じ込めに成功していまよね。レジリエンスと関わりはありますか?」
ショウ「レジリエンスは自信や自尊心だけで成り立っているわけじゃない。重要なポイントは、共感だ。他者との共感が、新しいアイディアを創り出し、やる気を引き出し、良好な人間関係を構築する礎となる。それが困難をはねのける力になるんだ。しかし、コロナ感染者へのヘイト、そこに係わる医療関係者への偏見や差別は、まさにその逆だな。日本ではまだまだそういった事例が多い」
マモル「共感ですか。ヘイトスピーチや偏見、差別はまだ多いですね。シンプルですが、とても難しい問題なのだと思います」
ショウ「現ニュージーランドの首相であるジャシンダ・アーダーン氏は、このコロナ禍が発生するより前、モスク銃乱射事件が起こったときにこんなメッセージを発した。
『They are us』(彼らは私たちである)
被害にあったイスラム教徒もまた自分たちと同じ仲間だという共感を訴えるメッセージだ。彼女はまたコロナによるロックダウンの最中にも毎日国民に向けてメッセージを送り続けた。我々は同じチームであると。こういった彼女の地道な取り組みがニュージーランドの国民のレジエンスを高める大きな力になったんだ。コロナ感染を封じ込める要因であることは間違いないだろう」
マモル「やはり地道な取り組みが必要なのか。それは自分自身のレジリエンスを高めていくうえにも当てはまりますね。日本のリーダーの言葉だけではなく、この困難を乗り越えていくためには、諸外国のリーダーのメッセージに注目していくことも必要だなと感じました」