※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『課題のある従業員にどう向き合うのか』になります。
ショウ「忙しいところを呼び出して悪かったな。大丈夫だったか?」
マモル「ええ。ちょうど気分転換したいなと思っていたタイミングでした」
ショウ「明日だろ、無料セミナーの開催。どうしても気になってな」
マモル「いつも気にかけていただいてありがとうございます。先輩が心配されているのは、セミナーでプレゼンを担当する橋本さんのことですよね」
ショウ「ああ。どうだい? 研修の成果はあったのか?」
マモル「先輩からいただいたアドバイスを活かしながら、研修してきました。顧問税理士さんにも協力してもらって、人生の輪を作成し、自分を見つめ直す機会も設けましたよ」
ショウ「そうか、人生の輪を描いてみたか。橋本さんのリアクションはどんな感じだった?」
マモル「描いてみた人生の輪はバランスが悪くてガタガタでしたね。橋本さんも、この車輪じゃあ、人生思うように前に進めなくて当然だとおっしゃっていました。仕事・キャリアやお金・経済といった項目は高い満足度なんですが、家族・恋人や友人・知人の満足度が極端に低いんです」
ショウ「笑顔で人と接することができないことと関係がありそうだな」
マモル「顧問税理士さんには、それを指摘してはいけないと止められました。あくまでも橋本さん自身が自分の問題に気づき、自己解決できるのを待つべきだと」
ショウ「それで、橋本さんは自分には笑顔が足りないと気づいたわけか」
マモル「…… いえ、それがそこから動けていない状態です」
ショウ「え? じゃあ、プレゼンの練習は?」
マモル「顧問税理士さんがいろいろ質問してくれて、橋本さんの気づきは多くなってきています。声は幾分大きくなりましたし、姿勢も良くなりました。ただ、なにせ表情が硬いままです。聞き手と目を合わせることもできません。一方的に話をしている雰囲気ですね」
ショウ「根本的な部分の改善はできていないのか……」
マモル「この短時間では難しいですね。ティーチング的な研修で指導していけば、強制力を効かせて修正できますが、コーチング的な研修では、まだ時間がかかります」
ショウ「顧問税理士のアドバイスはコーチング的な研修ということだな」
マモル「はい。中長期的に考えると、本当に橋本さんの内的モチベーションを高めて、パフォーマンスを発揮するためには、コーチング的な研修が必要だと思いますね」
ショウ「その状況でも橋本さんにプレゼンを担当させるのか?」
マモル「はい。顧問税理士さんは
『自分の限界がどこにあるのか発見するためには、
自分の限界を超えて、不可能だと思われるところ
まで行ってみる他はない』
とおっしゃっていました」
ショウ「イギリスの作家、アーサー・C・クラーク氏の言葉だな。それは失敗から学べと同じ意味だな。しかし、それだとせっかくのチャンスを台無しにしてしまう可能性もあるが、それでもいいのか?」
マモル「僕も担当しますし、橋本さんも一生懸命にやっているので、まだ失敗すると決まったわけではありません」
ショウ「そうか。そうだな」
マモル「ただ、どういう結果になったとしても、橋本さんが何かを感じてくれて、今後の自己成長に繋げてくれることを信じています」
ショウ「なるほど。パナソニック創業者の松下幸之助氏の言葉を思い出したよ。
『山は西からも東からでも登れる。
自分が方向を変えれば、
新しい道はいくらでも開ける』とね」
マモル「僕は登ることを諦めませんよ。きっと橋本さんもです」
ショウ「だとしたら、明日のセミナーがどういう結果になっても、マモルの会社の大きな転換期になりそうだな。全力でぶつかっていけよ!」
マモル「はい。ありがとうございます。それでは、戻ってまた明日のセミナーに備えますね」