※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
今回のポイントは、『自分の変え方』になります。
ショウ「暖かくなってきたし、そろそろ本格的にゴルフのラウンドができる時期になってきたな。どうだい? 今週末あたり」
マモル「いいですね先輩。実はこちらからお願いしようと思っていたところだったんです。ぜひゴルフに連れていきたいのがいるんですが」
ショウ「ほう、珍しいな。マモルの会社がご愛顧にしている取引先の社長さんか?」
マモル「いえ、それが、うちの従業員の杉山なんですよ。杉山は今、自分をどうすれば変えられるのかもがいている最中なんです」
ショウ「事務員の木梨さんの指摘を受け止められるかどうか、ということか。確か時間にルーズで、なかなかルールを守れないタイプだと聞いたが、ゴルフはルールに厳しいぞ」
マモル「それが今の杉山にはいいかもしれません。解決策を見つけ出すヒントになるかもしれませんから」
ショウ「そうか、どうすべきなのかをマモルが直接伝えたわけではないのか」
マモル「杉山には自分で考え、自分で課題を乗り越える力を身に付けてほしいんです。それができるだけの知識も経験もあります。必要なのは自分との向き合い方です」
ショウ「杉山くんは、変わりたくないのか?」
マモル「杉山は変わるべきだとよく口にしています。会社も、自分ももっと成長するためには、変わる必要があると。しかし、本当に変わりたいとは思っていません」
ショウ「偽りを口にしていると?」
マモル「いえ、杉山は、自分自身の潜在意識が変わりたくないと抵抗していることに気付けていないんです。だから前進するための意見を自ら主張することはあっても、木梨さんの指摘には反発しています。杉山が本当に変わるためには、自分自身を見つめ直し、問題に気付かなければなりません」
ショウ「傾聴し、自分自身を見つめるための質問をすることはあっても、決してアドバイスはしない。コーチングの鉄則だな」
マモル「ティーチングで指導することは可能です。社会人としてのマナーやモラルについては、ティーチングで一方的に教え込むだけで充分だとも思います。しかし、杉山だけは別なんです」
ショウ「目先の問題の正解だけを与えても、本当の問題の解決にはならないということか。マモルはよほどその杉山くんに期待をしているんだな」
マモル「IT関連についての知識、スキル、センスは一流です。だからこそ杉山の潜在意識はそこに甘んじています。変わらずとも現状の安定を維持することを望んでいます。本当は変化することでリスクを冒すことを怖れているんです」
ショウ「かなりじれったいが、杉山くんがそれを自分で気が付けるようになると、自発性と協調性は共存できそうだな」
マモル「ゴルフは相手ではなく、自分自身と向き合うスポーツです。ちょうどいいと思います」
ショウ「そうか。マモルの話を聞いていて、顧問税理士に言われた言葉を思い出したよ。アメリカの経済学者、ピーター・ドラッカー氏の
『未来を語る前に、
今の現実を知らなければならない。
現実からしかスタートできないからである』
という言葉だ」
マモル「ええ…… 実は僕も同じことを顧問税理士さんから言われまして、それでいろいろ試行錯誤しているところなんです」
ショウ「なるほどな。いや、俺は構わないぞ。実際に生の杉山くんに会ってみたいからな」
マモル「ありがとうございます。きっといいきっかけになるはずです」
ショウ「今年からゴルフのルールも大改訂されたから、改めて確認しておいた方がよさそうだな。俺も同じタイプの人間だと思われたら逆効果だからな……」