※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「せっかくの休養日だというのに、毎週呼び出して申し訳ない」
マモル「いえいえ、先輩だってお休みのはずですよね。そんな中で僕の会社とレンタル移籍している従業員ふたりを気にかけていただいてありがとうございます」
ショウ「お! 少し表情が明るくなった気がするな。もしかするとふたりに成長の兆しが見えてきたのか?」
マモル「そうです。と、お答えしたいところですが、まだまだです。この1週間もいろいろ話しかける時間を設けてはみたのですが、ラポール(フランス語で橋を架ける=信頼関係の構築)の形成には至っていません。ふたりとも心を閉ざし、本音を隠して業務に取り組んでいる感じですね」
ショウ「周囲の従業員の反応はどうだい?」
マモル「もう慣れっこになったというか、あまり期待しなくなったといいますか、コミュニケーションの機会も減ってきています。残念ながら、溝が深くなってきていますね」
ショウ「そうか…… マモルのコーチングでもあのふたりを変えるのは難しいのか……」
マモル「コーチングというのは本来、変わりたくても変えられない、成果を出したくても出せないでもがいている人に力を発揮するものですから、変わろうとしていない相手には効果が薄いんですよ」
ショウ「とりえず黙々と働いて稼いで生活できれば満足ということか。上田はまさにその典型だが、望月にはもう少し向上心があると思っていたがな」
マモル「話をしていてポテンシャルが高いことによく驚かされますから、才能があるのは間違いないんですがね。そこを磨く意識というか、才能を発揮するための努力が足りないです。これは望月さんにも、上田さんにも当てはまる話です。僕からするとうらやましくも思えますよ、僕にはそんな才能はありませんから」
ショウ「うーん…… マモルに才能がないとは思わないが、確かにここまで努力でカバーしてきた部分は大きいな。イギリスの銀行経営者だったジョン・ラボック氏の言葉を思い出したよ」
マモル「誰ですか? 最近のビジネスマンですか?」
ショウ「いや、ダーウィン氏の親友だから19世紀の人物だよ。銀行を経営し、政治家にもなり、考古学でも活躍した。旧石器時代や新石器時代という歴史用語は彼が提案したものさ」
マモル「いろいろなジャンルに興味を持って精力的に取り組んだ方なんですね。いったいどんな言葉を残したんですか?」
ショウ「ジョン・ラボック氏は、
『長い目で見れば、
努力しない天才よりも、
才能のない努力家のほうが、
多くのことを成し遂げる』
と述べている。おそらくは自分のことを才能のない努力家と評していたのだろう」
マモル「才能よりも大切なことは、地道に努力を積み重ねていくということですか」
ショウ「そうなるな。実際にジョン・ラボック氏もダーウィン氏ほど才能はなかっただろうが、努力で成果を出している」
ショウ「そう考えてみると、努力を継続できるってことも、ひとつの才能なのかもしれないですね」
ショウ「…… マモルは自分ことを自画自賛してるのか?」
マモル「いえいえ、とんでもない。僕の努力はまだまだ微力ですよ。実際にふたりに何ら良い影響を与えていませんからね。でもここで諦めたらダメだということがよくわかりました。育成の才能がなくても、独力を継続していけば成し遂げられることがあるということですから」
ショウ「マモルのそのひたむきな姿勢を見て、ふたりもきっと感じることがあるはずだ。それがふたりの成長したい! 変わりたい! という気持ちに火をつけてくれればいいんだが。まだ時間はかかりそうだが頼む!」
マモル「会社の成功とふたりの成長に関わる大事な役割ですからね、別な手法も取り入れながらこの状況を打開してみせますよ」