※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
マモル「まさか僕もこのお店に連日通うようになるとは、自分自身にびっくりです。本当に美味しいですよね。ここのフランス料理」
ショウ「いいのか? そんなにしょっちゅう外食していたら、奥さんが焼き餅を焼くだろう?」
マモル「そうですね…… じゃあ、今週中には妻と一緒に食べにきますよ。最近はなかなか忙しくて一緒に外で食事もしていませんでしたからね。このお店なら間違いなく妻も気に入ります」
ショウ「マモルにそこまで気に入ってもらえて俺も嬉しい限りだが、従業員の方はどうだ?」
マモル「ああ、そうですね。みんなも一度ここに連れてきます。上田さんと望月さんの歓迎会もまともに開催できていなかったですからね」
ショウ「いや、そうじゃなくて、上田たちの様子はどうかってことだよ。上田は慣れないプロジェクトリーダーを買って出たわけだろ、上手くいっているのか気になってな」
マモル「あまり言葉は良くないかもしれませんが、人を使うのが下手ですね。スキルも知識も経験もあるから、ほとんどのことを自分でやろうとします。だから上田さんばかりに負担がかかり、逆に他のメンバーは手持ち無沙汰になってしまう。もう少し仕事を振っていければいいんですが」
ショウ「そこが上田の孤立する原因でもあるんだがな」
マモル「でも上田さんの熱は確実に周囲のメンバーに伝わってきていますよ。自分から何か手伝えることはないか声をかける者も出てきていますからね。まあ、そこへの対応もまだまだぎこちないものですが」
ショウ「そうか。であれば、上田は着実にマモルの会社に貢献できてきているってことだな。後は、望月か…… 上田の姿を見て何か感じるものがあればいいんだが」
マモル「望月さんは相変わらずマイペースです。休憩時間の雑談になると積極的に周囲に絡んでいくのですが、業務になると良く言えば丁寧、悪く言えば鈍いですね。他の従業員と比べると同じタスクを完了するのに倍の時間を要しています」
ショウ「頭の回転も速いし、論理的な思考力にも長けているんだが、どうにも活かしきれないのが悩みだな」
マモル「他の従業員もじれったく感じて、別のタスクを依頼してせかしたりするのですが、忙しいと言ってすぐに断ります。自分のペースを乱されることを極端に嫌がる傾向がありますね。昨日は僕が試しにお願いしてみたんですが、やはり忙しいと断られました」
ショウ「おいおい、経営者直々の指示も断っているのか?望月は仕事の優先順位がまるでわかっていないな。申し訳ない。俺の指導不足だ」
マモル「いえいえ、頑固なのは僕の会社の従業員の共通項みたいなものですから。類は友を呼ぶってところですよ。他の従業員と決定的に違う部分は、言い訳が巧みなところでしょうね。別件を依頼されて、じゃあ、今のタスクを急いで取り組むとか、タスク管理を構築し直すといった考えはないようです。今のタスクにどれだけの時間と集中力が必要か、この後に何をするのか、明日は何をするのか、細かく説明して論破してくるんですよ。要するに自分が今、どれだけ忙しいのか誇大アピールしているだけなんですが」
ショウ「明治から昭和にかけて活躍したジャーナリストの徳富蘇峰氏は、こう述べている。
『多忙とは怠け者の遁辞である。
今日なすべきことを
今日しなかったら、
明日は必ず多忙である』
とね」
マモル「望月さんがパフォーマンスを発揮できれば、間違いなく素晴らしい戦力になります。そのためにはマイペースな取り組みとタスク管理についての改善が必要ですね。本人も実はそのことに気づいているだけに、手強いです」