※経営者として独立して間もないマモルが、先輩経営者ショウから成功に繋がるアドバイスを受けて成長していく物語です。
ショウ「師走に入ってどこも忙しそうだな。もう来週がクリスマス、翌週には大晦日、正月か…… 気がついたら2020年になっていそうだ」
マモル「改めてこの1年間の振り返りはしておきたいですね。それを踏まえて新年の目標を決める。どんなに忙しくてもこのふたつには時間を割きたいです」
ショウ「振り返りは大切だ。同じミスを繰り返さないためにもな。あれ? この台詞、確か昨晩に息子にしたぞ。あいつ悪かった学力テストの成績を隠していたんだよ。そんなことをしている間は伸びないぞと説教をしたばかりだ」
マモル「そういう点ではビジネスも学業も共通していますね。先輩、ひとつご質問があるんですが」
ショウ「ほう、どうしたそんな改まって。うちの息子にコーチングでもしてくれるのか?」
マモル「いえ、そうではなく…… 橋本さんの件だったんですが」
ショウ「おお、マモルが背中を押して起業することになったんだろう。しかもしばらくの間はマモルの会社の外注を受けて営業活動をするって聞いたが」
マモル「はい。話は順調に進んでいるのですが、橋本さんはやはり将来に不安を感じていまして、そのことで相談されたんです。どうやら以前にも橋本さんと同じように起業した同僚が何人かいるらしくて、そのほとんどが数年で挫折しているようで」
ショウ「起業するのと、継続していくのでは難しさが格段に違うからな。そんな中で30年も会社を続けるとなると本当に一握りだろう。まあ、そこを見つめてしまうと余計に尻込みしてしまうことになるだろうがな」
マモル「何が失敗の原因なのかということを気にしています。そしてアドバイスを求められました。もちろんケースバイケースですから、失敗した原因はそれぞれでしょうが、何か共通点はあるのではないかと。そう質問されても僕にはよくわからなくてですね」
ショウ「マモルはなんだかんだでここまできたからな。いろいろなトラブルはあったが、結果として成功している。成功するコツは答えられても、失敗する原因を答えるのは難しいかもしれん」
マモル「僕は成功まではまだ道のりがありますが、失敗したとは思っていないので、いろいろ考えてみたのですが、なかなかピンとくるものが見つからないんです。ですから、先輩の知恵を拝借したいなと」
ショウ「俺も起業した会社を存続させてきたからな。実際に失敗して会社を潰した経験はないが、コンサルタント業をやっているといろいろな会社や経営者には出会える。中には失敗する会社も人もいるのは確かだ」
マモル「それって何か最大公約数的なものってあるんでしょうか? 失敗の共通項のような」
ショウ「まあ、時代の変化に対応できなかったと言ってしまえばそれまでだが、対応できなかった原因があるんだろうな」
マモル「なんですか? ぜひ教えてください」
ショウ「結局、周囲が見えていないんだよ。社会や地域にこんな貢献をしたい。従業員に幸せを感じてもらいたい。そういう思いがあれば自ずと視点も変わってくるんだろうが、自分しか見えていない経営者は資金があっても最終的には失敗しているな」
マモル「自分しか見えていない…… 」
ショウ「フロイト氏やユング氏と並ぶ心理学者として有名なアルフレッド・アドラー氏はこう述べている。
『人生におけるすべての失敗の原因は、
自分のことしか考えていないことにある』
とね。何をしてあげたいのかという思いがある経営者は、やはり視野は広いし、心のある経営ができているよ。だからこそお客様に支持されるんだろうし、従業員のモチベーションも高いんだろうな」